一般住宅とクリニックの内装の違い~どんなところが違う? 対処方法は?
目次
一口に「内装工事」といっても、一般住宅とクリニックでは求められる要素が異なります。
ここでは特に「クリニック」に焦点をあてつつ、一般住宅とクリニックの内装の違いについて紹介していきます。
一般住宅とクリニックの違い~壁紙について
一般住宅とクリニックの内装は、下記の3点で大きく異なります。
- 抗菌および抗ウイルス仕様の壁紙の導入
- 設備に応じた特殊な部屋の用意
- ドアなどの耐久性の違い
それぞれ見ていきましょう。まず最初に取り上げるのは、「壁紙の違い」です。
私たちの周りには、無数の菌やウイルスがいます。特に病院の場合は、病原菌やウイルスを持った人が足を運ぶことが多い場所だといえます。
そのため、このような菌・ウイルス類からほかの患者様を守るための処置がクリニックには求められます。
そのときに頼りになるのが、「抗菌および抗ウイルス仕様の壁紙」です。
抗菌・抗ウイルス仕様の壁紙は多くの企業が手掛けていて、商品数も豊富です。
原理はそれぞれの壁紙によって異なりますが、菌やウイルスを無害化したり、その発生を抑制したりする効果が見込めます。また、菌とウイルスは違うものではありますが、「菌にもウイルスにも、どちらに対しても対抗できる壁紙」も多く出されています。
このような抗菌・抗ウイルス仕様の壁紙は、一般家庭であっても利用することがあります。どうしても汚れやすいトイレや水回りなどは、衛生を保つために、抗菌・抗ウイルス仕様の壁紙が採用されることがあるのです。
ただクリニックの場合は、前述の通り、多くの保菌者が訪れる場所です。そのため、トイレなどはもちろん、待合室の壁などもこの抗菌・抗ウイルス仕様の壁紙にすることが望ましいといえるでしょう。
また、壁紙だけではなく、カーテンやイスなども抗菌・抗ウイルス仕様のものにするとより安全です。
現在は抗菌・抗ウイルス仕様の壁紙の選択肢は非常に広く、柄やカラーなども選べるようになっています。またオリジナルデザインで壁紙を作ることのできる業者もあります。
「小児科なので、子どもが喜ぶデザインの抗菌・抗ウイルス仕様の壁紙にしたい」「落ち着いたトーンの壁紙にしたい」などの要望にも応えられるので、まずは気軽に相談してみてください。
設備に応じた特殊な部屋の用意
一般家庭には絶対にない数多くの設備が備えられるのが、クリニックの大きな特徴です。
レントゲン機器やMRI設備などはその代表例です。今回はそのなかから、特に「レントゲン機器」を取り上げます。
レントゲン機器を使った検査を行う場合、クリニックはエックス線室を設ける必要があります。機器の大きさにもよりますが、エックス線室を設けるにあたって必要とされる広さは、それほど大きくはありません。一般的には2~3畳程度の広さを確保できれば、検査は滞りなく行えるでしょう。
ただ問題は、「レントゲン機器を扱う場合、エックス線室には特殊な加工を施す必要がある」という点です。
レントゲン検査での放射線の被ばく量は非常に少ないものであり、健康には被害がないと考えられていますが、それでも放射線を遮るための手立ては講じなければなりません。
そのため、エックス線室には、放射線をカットするための鉛版(1.5ミリ~)を仕込むことになります。
レントゲン機器はそれ自体が高価なものであり、導入には3,000万円程度がかかります。また物によっては5,000万円を超えることすらあります。そのうえ、エックス線室には放射線カットのための処置をしなければなりませんから、ここに内装費用も上乗せされます。
レントゲン機器を導入するかしないかは、先生お一人おひとりのご判断に委ねられます。ただ高い買い物ではあるので、これを導入するべきかせざるべきかで悩んでいる場合は、
- 近隣にレントゲンの検査を扱っているクリニックがあるかどうか(競合するほかのクリニックや病院があるかどうか)
- 広さはどれくらいが良いのか、どのような機械を買うべきか
- 複数の医療機器販売会社および建築業者に、見積もりをお願いできるか
を考えていきましょう。
たとえば非常に近いところに、「昔からレントゲン機器を扱っている」というクリニックがあれば、導入には慎重になるべきです。
またエックス線室に必要とされる広さは導入する機器によっても異なるため、「どのような機器がいいのか、その大きさはどれくらいか」をよく考える必要があります。
さらに、レントゲン機器からもクリニックの内装工事業者もからも相見積もりを取ることが重要です。レントゲン機器の値段差はもちろんのこと、エックス線室の加工費用もまた業者によって大きく異なるからです。
- ドアなどの耐久性の違い
最後に、意外と盲点になりやすい「ドアなどに求められる耐久性の違い」について見ていきましょう。
一般家庭の場合、どれほど多くても、毎日欠かさず家を使う人の数は10人未満であると考えられます。
しかしクリニックの場合はそうではありません。言うまでもなく、クリニックは数多くの人が出入りするところです。クリニックによっては、毎日50人ほどの患者様が訪れるところも珍しくはありません。
一般家庭とクリニックを比べた場合、クリニックを利用する人は圧倒的に多いといえます。患者様が入ってくるたびにドアは開かれ、また閉められます。ドアも摩耗品であるため、何回、何十回、何百回、何千回、何万回と開け閉めをされていると徐々に痛んできます。
一般家庭で使われている扉は、10万回/5年の開閉回数を基準としています。しかしクリニックの場合、1人が2回開け閉めをする×50人×20日(土日祝日休み)×12か月=24,000回となります。10万回÷24,000回=4,166年……ですから、一般家庭と同じ基準で作られた扉をクリニックに導入した場合、4年と少しで壊れてしまう計算です。
壊れたドアは、患者様に対して非常に強いマイナスの印象を与えます。しかしすぐに付け替えようとしても、スケジュールの面や費用の面で折り合いが着かないこともあるでしょう。クリニックを開院する前にはこのような点にも注意をおいて、店舗用のドアを採用することを検討するとよいでしょう。なかには50万回もの開閉を想定して作られたものもあります。
ただこのような耐久性の高いドアは、当然一般家庭のドアに比べて高くなりがちです。そのため、クリニック内のすべてのドアを耐久性の高いドアで揃えるのが困難な場合は、「患者様など多くの人が頻繁に出入りするドアは耐久性の高いものを選び、スタッフしか利用しない場所のドアは耐久性がそれほど高くないものを選ぶ」などのような選び分けをするとよいでしょう。
一般住宅に求められる内装と、クリニックに求められる内装は大きく違います。クリニックには一般住宅以上の清潔さが求められますし、レントゲン機器などに対応できる特殊な加工を施した部屋を作ることも必要になってきます。また、多くの人が出入りする場所であるため、ドアなどの「消耗品」もきちんと選ばなければなりません。
なお内装の施工業者は、一般住宅を得意とする業者と、クリニックなどを得意とする業者に分かれます。この2つに良し悪しはありませんが、クリニックの内装を依頼したい場合は、やはりクリニックの内装を専門に手掛けている業者に頼むことをおすすめします。
私たちフルサポクリニックは、400軒以上のクリニックの内装を手掛けてきた専門業者です。ぜひご相談ください。
この記事の著者
フルサポクリニック編集部
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