調剤薬局の内装・デザイン事例3選
病院(クリニック)と連携をして患者様の生命と健康を守る「調剤薬局」は、私たちの日々の暮らしに欠かすことのできない存在です。ただそのような調剤薬局の「内装・デザイン」に注目する人は、それほど多くはありません。しかしこの「調剤薬局の内装・デザイン」は、患者様自身が気づかないような無意識下のなかで、確実に彼らにアプローチするものです。
ここでは、「調剤薬局の内装を考えるうえで大切なこと」「患者様にとって魅力的に思える調剤薬局のデザインとは」を、実例を挙げて解説していきます。
調剤薬局の内装はまずは法令順守から
調剤薬局の内装を考えるうえで重要なのは、
・法令順守
・適切なバリアフリー
・ターゲット層の把握
の3点です。
重要度順に見ていきましょう。
1.法令順守
人の生命や健康に関わる施設の内装は、法律によって縛られています。
もっとも代表的で分かりやすい例として「面積」を取り上げますが、調剤薬局の場合は、「全体の広さは19.8平方メートル以上、調剤質の面積は6.6平方メートル以上(かつ2人以上の場合は9.9平方メートル以上、3人以上の場合は1人につき3.0平方メートル程度をプラスすることが望ましい)」と決められています。
また、換気が十分であることや清潔であること、明るい(60ルクス以上)ことなどが求められます。
ちなみに下記では「まるでホテルと見間違うような調剤薬局」を紹介しますが、「外見上で調剤薬局であると分からない」調剤薬局は、違法とされています。
バリアフリー
調剤薬局を新しく解説あるいはリフォームをする場合は、このような「法の観点」を遵守する必要があります。
また調剤薬局はその性質上、歩行に難がある人や車いすの人が来る可能性が極めて高い場所であるため、彼らがスムーズに動けるようなスペースを確保することが重要です。バリアフリー化に関しては必須ともいえるものですが、バリアフリーを考えるうえでは、「ただ段差をなくすこと」だけではなく、「適切な場所に段差を入れること」も考慮しなければなりません。たとえば、玄関先に、靴を着脱するときに使える椅子を置くなどです。
ターゲットの把握
このことを踏まえたうえで、「人が足を運びやすい内装」「掃除などが手早く行える調剤薬局」を目指すとよいでしょう。なお、「人が足を運びやすい内装」を考える際は、「その調剤薬局に訪れる人の客層」を意識することが重要です。たとえばビジネス街のビルの一角にあるならば足を運ぶ人はビジネスマンが多くなりますし、小児科などを近くに抱えるところにある調剤薬局ならばお子さん連れが多くなるでしょう。
もちろんそれ以外の人が足を運ぶ可能性もありますが、「メインターゲットに合わせた内装」を考えることは重要です。
モダンなホテルと見間違うような「大阪梅田メディカルセンター」様の内装
上では「調剤薬局の内装に求められる要素」について解説してきました。ここからは、実際の調剤薬局の内装デザインを紹介しつつ、その特徴について解説していきます。
まず取り上げるのは、「大阪梅田メディカルセンター」様です。
大阪梅田メディカルセンター様の内装は、非常にモダンでスタイリッシュです。一休建築事務所がその設計デザインを手掛けた調剤薬局であることもあり、ホテルにも似たデザインでとても個性的です。
数多くのクリニックと薬局、カフェを併設した医療モールとでも言うべき空間であり、立地(梅田駅直通)も含めて非常に大人にとって通いやすい調剤薬局であるといえます。
落ち着きとシックさを持った内装が大阪梅田メディカルセンター様の特徴です。黒と白を掛け合わせた現代的なデザインですが、そこに「木」「茶色」を組み合わせることで、ともすれば冷たく堅苦しい印象になりがちな空間を和らげています。
「調剤薬局ではあるが、調剤薬局らしくないデザイン」が特徴の大阪梅田メディカルセンター様は、「現代的な調剤薬局」を考えるうえでのひとつの基準となるでしょう。
白と青を基調にした「しろくま薬局」は、名前とのマッチ度も高い
上記で紹介した「大阪梅田メディカルセンター」様は、スタイリッシュでモダン、大人向けのデザインが特徴でした。
しかし同じ大阪府の薬局であっても、方向性が大きく異なる調剤薬局もあります。
それが、「しろくま薬局」です。
しろくま薬局は、その名前からも連想されるような、海の青色としろくまの白い毛を基調としたデザインです。涼し気な雰囲気をたたえる内装は名前とよくマッチしていて、統一感があります。どこか優しくかわいらしい雰囲気を持っているため、お子さん連れの人にとっては足を運びやすい薬局だといえるでしょう。
しろくま薬局の広さは、10坪~20坪です。調剤薬局のなかにおいてはそれほど狭すぎるというわけではありませんが、100坪以上の大阪梅田メディカルセンター様に比べると(こちらは綜合医療モールですが)狭めだといえます。
しかし無駄な装飾がまったくないこと、白を基調としていること、窓を大きくとっていることから、狭さは感じさせません。シンプルでありながら解放感があり、圧迫感がないのがしろくま薬局様の内装デザインの魅力です。
暖色系をふんだんに浸かった暖かみのあるデザイン「アルプス薬局平野店」様
アルプス薬局平野店様は、「しろくま薬局」様と同じく、10坪~20坪の面積の薬局です。ただ、面積はそれほど変わらないものの、その方向性はしろくま薬局様と大きく違います。
しろくま薬局様が寒色系を使っていましたが、アルプス薬局平野店様は茶色やオレンジなどの暖色系の色を積極的に店内に取り入れています。そのため、暖かくぬくもりのあるデザインに仕上がっています。優しい雰囲気を持つ調剤薬局となるため、老若男女、どのような人でも足を運びやすいのもまた、アルプス薬局平野店様の大きな特徴です。
また、アルプス薬局平野店様が積極的に使っている暖色系の色は膨張色であるため、20坪以下のデザインの調剤薬局であっても、狭さを感じることはほとんどないでしょう。
また、アルプス薬局平野店差までは、柔らかい照明をチョイスしたり、椅子を配することのできるスペースを設けたりしています。このような工夫は、空間に奥行きと立体感を出してくれます。
まとめ
調剤薬局が内装を考えるとき、まず真っ先に考慮しなければならないのは、「法律」です。調剤薬局は広さや明るさ、管理状況などが法によって細かく設定されています。これをクリアしたうえで、「バリアフリーの施設になっているか」を確認しましょう。そこまで済んだら、最後に「ターゲット層の把握」を行います。自局に足を運ぶ患者様はどのような人(属性)が多いのかを洗い出し、その人たちにとって通いやすい内装を考えていくようにします。
なお調剤薬局は、20坪以下のスペースで建てられることもよくあります。しかし内装のデザインを工夫すれば、狭さを感じさせない薬局となるでしょう。そしてその「内装のデザインの工夫」はひとつではなく、多くの選択肢があります。
私たちフルサポクリニックでは、施主様の調剤薬局の広さやターゲット層、そして施主様ご自身の好みなどを踏まえて、最適な内装デザインを提案していきます。ご要望やご不明点はなんなりとお問い合わせください。
この記事の著者
フルサポクリニック編集部
医療、介護施設の設計施工を得意とする「FULLsupport」が運営。
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