内科クリニックが押さえておくべき内装設計のポイントを解説
目次
内科クリニックは、身近でなんでも診てくれるという「かかりつけ医」としての機能が重要です。機能的なものだけではなく、その地域には欠かせない医師や診療所が求められているのです。
これからどのように運営していくかというイメージや診療においてのコンセプトはもちろんお持ちでしょう。それらを活かしていくためには、建物や物件をどのように活用していくのか、しっかりとデザインすることが大事になってきます。
つまり逆にいえば、デザインや内装が「目指している医療サービス」を表しているものだといえるのです。
そこで今回は、クリニック・医院の内装設計をする上で、大切な考え方やポイントを解説していきます。
▼ イメージに沿った内科クリニックに設計するための考え方
来院される地域の方々が、治療や検査に対して負担や不安を感じることがないような空間づくりを行うことが大事です。
また来院される方々のみならず、近隣に住む人たちや道行く人たちが「ここで診てもらいたい」と心和むような外観にすることも大事です。
そのために重要なことは患者様目線であることは間違いありません。ただし、患者様だけの目線で設計するのではなく、開業する医師が持っているコンセプトを活かしたものにならなければ機能的であるとは言えなくなります。
どうしても限られたスペースになりますから、開業するうえでどのようなコンセプトを重視していくのかを明確にするところからスタートします。その軸がしっかりとしていると、多岐にわたる医療ニーズに応えることのできる、空間とすることができるのです。
コンセプトを活かした空間にするための考え方についてお伝えします。
1、明るい開放的な空間
患者様にとっては、治療やつらいリハビリのために来院されています。しかし病院内が明るく開放的な空間であれば、心を和ませることができ安らぎをもたらします。
患者様が利用される待合室や受付、診察室、処置室、リハビリ室などには、外からの光や陽射しが入るように工夫し、ぬくもりと落ち着きを感じさせることのできる明るく清潔感のある空間にしていきます。
窓ガラスに遮熱高断熱複層ガラスを使用すると、夏は強い日差しを60%程度カットしますので、紫外線による日焼けを防止することができます。また断熱効果にも優れていますので、エアコンの快適さを逃がすことはありません。
冬場には外からの光をしっかりと取り入れて、熱を外に逃がさないようにします。開放的な空間であれば、温かい陽射しを感じながらくつろぐことができるのです。
冷暖房を必要以上に活用することがなくなりますから省エネにつながり、無駄なコストを削減することも可能です。
2、入りたくなるような外観
また、内装にこだわるだけではなく、外観にも工夫が必要です。
外観は魅力を伝えるための広告としての意味合いがあります。もちろん医療サービスの内容や落ち着きのある内装はとても大事ではありますが、そもそも外観デザインが魅力的でなければ、来院すらしてもらえません。
特に戸建てであれば、多くの患者様は最初は外観で判断されるものです。地域の方が新しいクリニックを利用する際には、「外観」「雰囲気」「医療サービス」のプロセスを経て次回からも利用するか判断されます。
つまり外観にこだわりを出すことは、医療サービスのカラーを全面的に押し出すことが可能になるのです。
こだわりのなかにも患者様への配慮を加えるようにします。雨や日差しをしのぐことができるキャノピー(ひさし)があれば、自家用車やタクシーを利用される方に喜ばれます。ベンチも用意してあれば、足の不自由なお年寄りにおいても負担なくクリニックを利用することができるでしょう。
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3、清潔感があり使い勝手の良いアメニティ
近隣住民が利用される際には、「化粧室」は気になるポイントの一つであるといっても過言ではありません。特にお年寄りや女性の方においては、外観や内装と同等、あるいはそれ以上に大事な部分であるといえます。
どれだけ見た目が良く、きれいな内装であったとしても、設置されている化粧室に清潔感がなかったり、使い勝手が悪いとそれだけで気分が滅入ってしまいます。
アメニティに配慮するということは、ある意味、患者様に対するおもてなしの心を表現するということではないでしょうか。
化粧室は限られたスペースになってしまうこともありますが、可能であればどなたでも安心して利用できるユニバーサルデザインにしておくことが重要です。またオート水栓やハンドドライヤーが設置されていれば、クリニックに優しさを感じることができます。
また赤ちゃんのオムツ交換台が設置されていれば、赤ちゃん連れのママでも安心して来院されることでしょう。さらに建具などに抗菌剤が使用されていれば、安心のプラスアルファとなることに間違いありません。
▼ 内科クリニック設計において大事なポイント
近隣の住民にとっては「身近にいてくれる心のよりどころ」を求めています。
そのため急な発熱や痛みがある場合や健康に対する相談などにおいて「この先生にお任せしたら大丈夫」と思っていただけることが大切になることは間違いありません。
医師が診察や治療に専念し、患者様が安心して通院していただくには、設計時において大事なポイントがあります。
1、スタッフの作業や患者様の移動を考えた動線計画
医師や看護師などスタッフなどによって使いやすく、さらに患者様に余計な負担をかけることがないように院内設計にしておくことが大事です。
スタッフと患者様双方が効率的に活用できるようにするためには、この2つの動線が交差しない工夫が大事です。
そのため設計段階において、待合室と診察室だけではなく、医療機器は何を導入するのか、どこに配置するのか、それによって動線はどのような影響を受けるのかということまでプランニングしておきます。
また効率を重視するだけではなく、プライバシーにも配慮しなければなりません。患者様が安心して診察を受けられるようにするためには、待合室や診察室にも工夫が必要です。患者様同士の目線が合わないようにすることも大事になってきます。
プライバシーが確保されていれば、医師に対して安心して心を開くことができるでしょう。医師と患者様の距離感がぐんと縮まるはずです。
2、患者様の快適性や安心感の確保
高熱や強い痛みなどを訴える患者様は、多く来院されます。インフルエンザやノロウイルスなどの感染症に罹患されている患者様の来院も予想できるでしょう。また胃カメラや内視鏡などの検査を受けるために来院される患者様もおられます。
いずれの患者様においても、不安なく治療や検査を受けることができるように、またすべての方が安心して来院できるように配慮しておかねばなりません。
換気をしっかりと行えるようにしておくと、院内のウイルスや雑菌を蔓延させないようにすることが可能です。換気システムの計画は綿密に行うようにします。
また診察室をいくつかに分けておくことで、感染症の隔離室としての活用や、身体に負担のかかる検査を受けられた患者様が身体を休めるための部屋として活用することもできます。
少しの配慮で患者様の快適性や安心感を高めることが可能です。
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プライバシーの保護
プライバシー保護も大事なポイントです。
診療室の会話が待合室に聞こえてしまっている環境では、安心して診察を受けることができません。また、待合室で他の患者様と目が合ってしまって気まず思いをすることもあります。椅子の配置や、防音設備なども患者様の個人情報保護の観点から考慮する必要があります。
■ まとめ
内科クリニックの設計ポイントについてお伝えしました。多くの地域住民に親しまれているクリニックを見てみますと、必ず共通点が存在します。
外観にしても内装にしても明るくて清潔感があると良い印象を与えることができますので、患者様が「来院しやすい」「してみたい」と感じます。
また見た目の印象がいいと、医療サービスにおいても安心できますし、また次も診てもらおうという気持ちになれるものです。
このようにデザインは、医師の診療においてのコンセプトを活かしていくためにとても大事になるものだと考えます。どのように空間づくりを行うのか、ポイントを押さえておくことが必要です。
この記事の著者
フルサポクリニック編集部
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