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開業医の失敗件数のデータをもとに事例で共通する問題点のポイント

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開業医の失敗件数と事例・激戦化するクリニック業界の実態

    目次


クリニックの需要と供給のバランスが崩れ、廃業件数が増加していることはご存知のとおりです。

今回は具体的な統計をもとに実際の失敗事例と共通する問題点についてまとめました。開業に向けて今後の課題を解決する糸口の参考になれば幸いです。

【目次】
○開業医の失敗件数データ

○開業し数年で失敗した事例と原因
・東京都の一等地で失敗したケース
・内科クリニックを開業して失敗したケース
・多額の借金をして失敗したケース
・勤務していた病院近くに開業して失敗したケース
・戦略なしに歯科診療所を開業して失敗したケース

○失敗する医院に共通するポイント
・立地に依存して失敗するケース
・専門性がハッキリせずに失敗するケース
・多額の借金をして失敗するケース
・交通の便が悪く失敗するケース
・歯科診療所よって失敗するケース

○まとめ

▼ 医療施設の種類別にみた開設と廃止の数

厚生労働省の「平成29年(2017)医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況」によりますと、医療施設の種類別にみた開設と廃止の数はつぎのようになっています。

医療施設の種類

開設

廃止

精神病院

4

5

一般病院

85

101

一般診療所 ※有床

51

113

一般診療所 ※無床

7623

7055

歯科診療所 ※有床

0

1

歯科診療所 ※無床

1720

1738

※2016(平成28)年10月~2017(平成29)年9月において

このように見てみると、無床の一般診療所以外では、廃止している数のほうが多いことに気がつきます。

廃業する理由はさまざまですが、この数字だけを見て判断するのであれば、開業はかなり厳しい数字であることが分かります。

ただ開業して数年で失敗しているようなケースを探ってみると、おおむね共通した理由があることも分かりました。

ここでは開業医の失敗事例についていくつかご紹介し、激戦化するクリニック業界を勝ち抜いていくにはどうすればいいのかお伝えしていきます。

▼ 開業医の失敗件数データ

クリニックに絞ってデータをお伝えしていきましょう。2017(平成29)年1月末調べの医療施設動態調査においては、かなり厳しい数字が報告されています。

医療施設の種類

施設数

増減数

2017年1月

2016年12月

一般診療所 ※有床

7523

7550

△27

一般診療所 ※無床

93982

94021

△39

歯科診療所

68872

68935

△39

【引用元】厚生労働省 医療施設動態調査(平成29年1月末概数)

わずか1か月の間で、これだけのクリニックが廃止されていることが分かります。

もうひとつショッキングなデータをお伝えしましょう。

帝国データバンクが行っている調査によりますと、2018年の医療機関(病院・診療所・歯科医院)の倒産件数は次のようになっています。

医療施設の種類

倒産件数

※負債1000万円以上、法的整理

病院

3

一般診療所

14

歯科診療所

23

【引用元】医療機関の倒産動向調査(2018年)

この数字が2000年以降では3番目に多い数字となっており、全体で40件に達したのは8年ぶりとなっています。

また歯科診療所の倒産件数は過去最多となっており、過去最大であった2009年、2012年、2014年の15件を大きく上回る結果となっています。

ちなみにこの40件の中で「破産」が34件、「民事再生法」で6件となっています。

なぜこのような事態に陥ってしまったのでしょうか。開業して数年で廃止した事例をいくつか紹介していきたいと思います。

▼ 開業し数年で失敗した事例と原因

クリニックを開業したものの、数年で失敗する例も存在します。

特に都市部であれば、すでに供給過多の地域も存在していますので、開業すれば成功する、開業すれば儲かるという昔の状況は存在していない状況です。

現在、クリニックで成功されている開業医は綿密なマーケティングを行ったのちに、開業されています。かなりの年収を得ている人も少なくありません。

ここではいくつかのケースを紹介し、廃業したデータをもとに失敗した原因について見ていきます。

・東京都の一等地で失敗したケース
A内科クリニックは、東京都内の一等地に開業されました。この土地は開業医の先生自身が住んでいる地域であり、高所得者層の住民が多いことで知られています。

近隣には内科がたくさんありましたが、この場所なら大丈夫だろう、儲かるだろうと綿密な計画なしに開業されることになりました。しかし開業してもなかなか患者様が増えず、わずか数年で廃止することになりました。

・内科クリニックを開業して失敗したケース
B内科クリニックでは、多くの患者様を取り込むために、専門分野に特化するのではなく、「内科 循環器科」と並べて併記し開業されました。

しかし近隣に内科クリニックが多いことも影響し、なかなか患者様が増えません。このクリニックも数年で廃止することになりました。

・多額の借金をして失敗したケース
C医師は長く勤務医を続けていましたが、キャリアアップと報酬アップを期待して、開業したいと考えていました。勤務医時代に付き合いのあった開業に詳しい薬業者に相談すると、開業を手伝ってくれることに。

開業資金のほとんどを借金し、いざ開業してみると患者様は一日に多い日でも20人程度。わずか1年で運転資金は底をつき、自己破産するという最悪の状況で廃業されています。

・勤務していた病院近くに開業して失敗したケース
D医師は、今までE病院に勤務し実績を積んできました。その実績を活かしてこの病院近くにクリニックを開業することにしました。D医師は病院でも患者様から評判になっており、開業時にも多くの患者様から注目されていました。

しかしE病院は立地の悪い場所にあり、その穴を埋めるために送迎車を運行しています。D医師が開業したクリニックでは送迎車の運航はできず、交通の便の悪さをカバーすることはできませんでした。

・戦略なしに歯科診療所を開業して失敗したケース
F医師は、自分自身が希望した病院に就職することができず、歯科診療所を開業することにしました。近隣に歯科診療所のない場所があり、ここならば患者様を集められると考えたのです。

F医師は近隣に歯科診療所がないことに安心して、年月をかければ患者様は集まると考えていました。そのためブランディングなど戦略なしに開業しましたが、結局思うように集患することができず廃業することになっています。

【関連記事】歯科医師が開業について書いたブログ8記事まとめ

▼ 失敗する医院に共通するポイント

失敗する医院に共通するポイントを一言でまとめるとしたら「経営の視点」であるといえます。上記でお伝えした事例でもポイントをまとめてみると以下の通りになります。

・立地に依存して失敗するケース
開業して失敗したケースを集めてみると、好立地であるにも関わらず廃業しているケースが多いことが分かります。

開業場所を確認すると、多くの先生は高所得者層の住民が多く、自身も住んでいる場所に近いところを希望されることが多くあります。

しかし好立地では当然ながら既に飽和状態になっていることが多く、立地に依存し過ぎてしまうと失敗してしまうことが少なくありません。

・専門性がハッキリせずに失敗するケース
内科は競合が多いことが分かりますが、その中で競合に打ち勝つためにはクリニックのコンセプトを考えておく必要があります。

近年、競合が多い地域では「内科」だけの表記をせずに、「循環器内科」「呼吸器内科」など専門性に特化した表記で開業するパターンが大きなっています。

特化しすぎることで「受診する患者様の幅を狭めてしまう」という意見を持つ人もおられますが、逆に専門性のあるクリニックに患者様を取られてしまう結果となってしまいます。

・多額の借金をして失敗するケース
ひと昔前までは医師が開業するといえば、銀行は喜んでお金を貸してくれる時代がありました。しかし現在はなかなかそのようなことはありません。

それは銀行も貸し倒れを警戒しているほかありません。それだけクリニック開業の難しさを反映していることであるといえるでしょう。

もしも借金するのであれば、資金繰りについて綿密な計画を持っておくことが大事です。資金繰りは税理士や会計士はしてくれません。

・交通の便が悪く失敗するケース
昔から良くあるクリニックの開業方法に「お膝元開業」があります。これはもともと勤務していた病院近くに開業して、地元のパイプを活かすというものです。

「○○先生が開業された」と近隣住民から話題となりますので、スタートダッシュしやすい開業方法であることが知られています。

ただしこの開業方法においては、交通の便が悪いと意味がありません。病院には送迎バスが運行されていることが多いですが、クリニックでは交通便の悪さをカバーすることは不可能です。

・歯科診療所よって失敗するケース
歯科診療所は全国に6万8000件あることが分かっています。この数字は全国にあるコンビニ店舗数よりも多い数字となっています。

歯科診療所を開設する場合は、かなり綿密にマーケティングを行い、ブランディング戦略などを持っておくことが大事です。

上記に述べた通り歯科診療所の倒産件数は過去最多を記録していますが、歯科医院の倒産ラッシュは今後も考えられるでしょう。開業すれば儲かるという時代ではないということです。

【参考記事】日本医事新報社 一般診療所の開業と廃業についての統計的考察

■ まとめ

厚生労働省の医療施設調査を見てみると、一般診療所の開業件数自体は増えています。これからも増えていくことが予想されています。

医師の数は増えており、病院の数が減ってきていますから、自分の思うような就職先が見つけられずにいる医師が増えています。それらの医師によって開業せざるを得ないという状況がこれからも続くことが考えられます。

一方で健康意識の高まりは地域のクリニック経営において追い風となっています。いつまでも健康でいたいという願いを持つ人は増えていくでしょう。

医師が開業して成功するためには、経営としての視点が必要になります。資金繰りはもちろんのこと、開業コストの削減、ブランディング、人材育成・教育、マーケティング、地域交流など、課題を分けて対策を立てることです。

今後、大病院とクリニックの役割、かかりつけ薬剤師が浸透するにつれクリニックの需要は変化をしながら前進していくこととなります。

この記事の著者

フルサポクリニック

フルサポクリニック編集部

関西エリアでのクリニック実績多数!
医療、介護施設の設計施工を得意とする「FULLsupport」が運営。
当サイトではクリニックにまつわる設計や内装工事にまつわる記事を随時更新中

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