内装からみるクリニックの感染症対策について
新型コロナウイルス以降、クリニックでは以前にも増して感染症対策が重要になってきました。
感染症対策というと「手洗い」「うがい」などが真っ先に取り上げられますが、ここでは「クリニックの間取り・設備」からできる予防について見ていきます。
間取りや設備で感染症を対策
クリニックの間取りや設備から感染症対策を考えるときのポイントは、以下の5つです。
・一方通行の導線を意識する
・入口に手洗い場を設ける
・ゾーニングをする
・抗菌抗ウイルスの壁紙の導入
・換気システムを考える
それぞれ見ていきましょう。
「一方通行」の導線を意識すると、接触機会を軽減できる
感染症対策として、「一方通行の導線」を意識することは有効です。一方通行にしておくことで、患者様同士の距離を物理的にあけることができます。また、混雑を緩和することができるのも大きなメリットです。
なお、ゾーニング(後述します)に有効なパーテーションですが、このパーテーションは一方通行の通路を作る際にも役立ちます。加えて、わかりやすく院内標識を設置することで、人と人との接触を減らすことができます。
入口に手洗い場を設けることも非常に有効
「手洗い」は、感染症対策の基本です。
これを徹底するためには、クリニックの入口や玄関先に手洗い場を設けることが有効です。院内にあるトイレに誘導して手洗いを奨励するとなると、コロナに限らずほかのウイルスや菌も院内に入りやすくなりますし、トイレには行かない人も多いため、感染症対策としてはやや心もとないといえるでしょう。
しかし入口付近に手洗い場を設置して、手洗いの案内をすることで、多くの人が手洗いをしてから中に入ってきてくれるようになるでしょう。
また、クリニックから出る際にも手洗いを奨励すれば、さらに効果的です。
「ゾーニング」を行えば感染リスクも下げられる
コロナ禍でも徹底された「発熱している人と、そうではない人では入口・窓口を分ける」「発熱があると考えられる患者様には、駐車場の自家用車でお待ちいただく」「パーテーションや掲示板を設置する」などのゾーニングは感染症対策として有効です。
スペースに余裕がある場合は、個別に対応できる個別ブースを作りましょう。感染症が疑われる患者様と、それ以外の人で待合室を分けて、感染症が広がらないようにします。
なおこの個別ブースは、感染症対策のみならず、デリケートな相談を行うときの相談室としても役に立ちます。精神科や泌尿器科、AGAクリニックなどの場合はもちろん、小児科や皮ふ科などであっても、個別ブースを用意しておくと、患者様の要望に対応できます。
抗菌抗ウイルスの壁紙を導入しよう
抗菌・抗ウイルスの壁紙を使って内装工事をすることも、感染症対策となり得ます。抗菌・抗ウイルスの壁紙のなかには、「抗ウイルスの処理をしていない壁紙に比べて、24時間後のウイルス数が99パーセント以上減少した」とする壁紙もあります。
また抗菌効果のある壁紙は、試験後(24時間後)の生菌類が0.63以下でなければならないと壁紙工業会は定めています。
もちろん、抗菌・抗ウイルス壁紙を使用した場合でもお手入れは必須ですし、すべての菌・ウイルスをゼロにできるわけではありません。しかしこれらを積極的に使うことで、感染症を予防できるのは確かです。
換気システムにこだわることはどんなクリニックでも有効
換気をしっかりすることで、汚染された空気を外に排出することができます。
自然換気(窓を開ける)と、機械換気(機械による換気)を併用すれば、さらに効率よく換気ができます。自然換気によって新鮮な空気を取り込むことができますし、季節・天候が悪く自然換気が難しい状況でも機械換気によって空気を取り替えることができます。
換気は一般的に、院内の数か所に換気扇を設けてそこから空気を入れ替える方式をとります。しかし感染症対策を考えるのであれば、各部屋に換気扇を設けて、独立して換気できるようにすることをおすすめします。
なお空気清浄機能つきの換気システムを導入すれば、院内の空気はさらにきれいになるでしょう。
今からでもできる! 日々の意識や簡単な内装工事で感染症を防ぐ
「内装はもう出来上がっているが、今から感染症対策をしたい」「簡単な工事を行うだけでできる感染症対策があるのであれば知りたい」という人もいるでしょう。
ここからは、「すでに内装が完成しているときにでもできる、間取りからみる感染症対策」について解説していきます。
受付の飛沫防止対策グッズはクリアガラスやスクリーンを使えば圧迫感も少ない
受付の飛沫防止のために、クリアガラスやスクリーンを使うのは有効です。たとえば、ビスを取り外して洗浄できるアクリル板などがその代表例です。
クリアガラスやスクリーンは圧迫感が少なく、「区切られている」「仕切られている」という感覚を患者様に抱かせにくいのもメリットです。患者様の顔も見られるため、異変や違和感に気づきやすいというプラス点もあります。
待合室の座るイスを工夫すれば、自然に距離を開けられる
完全予約制であっても患者様に待ってもらう場合はありますし、完全予約制ではないところであれば待合室で複数の患者様が待機するケースは多いでしょう。
このような場合に備えて、イスを工夫します。
一般的なソファ型のイスの場合はどうしてもお互いの距離が近くなってしまい、接触機会が増えます。
しかしひじ掛けのある1人用のイスを並べれば、接触機会を大きく減らすことができます。
非接触型の蛇口や自動ドアは簡単な工事で導入可能
トイレの手洗い場の蛇口は、非接触型にするとよいでしょう。非接触型にすることで感染症対策になることはもちろん、手洗い場を清潔に保つこともできるようになります。
また、入口は自動ドアにして、特にセンサーによる非接触型のものを利用すれば、感染リスクを下げられます。
このような「蛇口の交換」「扉の交換」は、感染症対策として高い有効性を発揮し、工事期間も比較的押さえられるのがメリットです。たとえば蛇口の交換は1時間程度で終わりますし、自動ドアの導入は早ければ2日程度、基礎工事から行う場合でも最長で1.5か月程度で完了します。
下記の記事では、衛生面も考慮したクリニックの内装全般に関する基礎的な知識を紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
【クリニック内装の基礎知識】設計・施工デザインのポイントと注意点
感染症対策は間取りから
消毒液などを各所に配置し、マスクをつけたり、手洗いを奨励することは、感染症対策の基本となるものです。
しかしそれに加えて、「ゾーニングする」「一方通行にする」「非接触型の蛇口や自動ドアにする」などのように、間取り面や設備面から感染症対策を行うことも重要です。クリニックは病気を抱えた人や抵抗力が落ちている人が来院することが多いので、ほかの設備以上に気を配る必要があるでしょう。
フルサポクリニックでは、感染症対策を踏まえた間取りの提案・設備工事を行っています。クリニックの内装に関することなら、ぜひご相談ください。
この記事の著者
フルサポクリニック編集部
医療、介護施設の設計施工を得意とする「FULLsupport」が運営。
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