耳鼻科の内装のポイントと注意点
求められるクリニックの内装は、その科ごとに異なります。
ここでは「耳鼻科」を取り上げて、その内装デザインのポイントについて解説していきます。
医療スタッフはもちろん、患者さんもすぐに動けるつくりに
耳鼻科は、他の科に比べて1人の患者様に対してかける診療時間が短いとされています。明確な統計はありませんが、1つの指標として、「耳鼻科で1人の患者様の診察にかける時間は、5~7分程度」という数字が挙げられています。
このため、耳鼻科の内装デザインは、「患者様もスタッフもすぐに動けるつくり」にしておくのが望ましいといえます。
1人目の患者様を診察をしているときに、2人目の患者様をすぐに動ける場所に待っていてもらい、2人目の患者様を案内したらすぐに3人目を……とすることで、スピーディーに診療ができますし、時間のロスも少なくできます。
また、耳鼻科の場合は、診察室―待合室 で分けるのではなく、診察室―内待合室―外待合室 の3つに分けた方がよいでしょう。外待合室まで出て患者様の名前を呼んだり、診察室からやや遠い位置にある外待合室から患者様に都度足を運んでもらう形式にしたりしていた場合、どうしても「診察までの空き時間」ができてしまうからです。
「だれでも動きやすいつくり」を心掛ける
耳鼻科を利用する年齢層は非常に広く、幼児からお年寄りまでクリニックに足を運びます。
世代を問わず多くの人が足を運ぶことになる耳鼻科は、「どの世代にとっても通いやすい内装であること」が必須です。
たとえば、キッズスペースを設置したり、トイレは車いすが楽に入れるようなものにしたり、オムツ交換台や子ども用トイレなどを設置するとよいでしょう。現在はキッズスペースにスクリーンを設置して、子ども向けのアニメを流している耳鼻科もあります。なおスクリーンは、「小さな患者さんがいないときはクリニックの案内なども流せるため、非常に使い勝手がよいものだといえます。
現在のクリニックは、そのほぼすべてがバリアフリー化されています。耳鼻科を新しく建てるときも、当然バリアフリーを意識しなければなりません。
バリアフリー化を考えるときには、「車いす2台がすれ違える廊下の幅」にするのが理想的です。ただこれにはかなりの広さが必要ですし、一般的に敷地面積が広くなればその分費用もかさみます。そのため、これが難しい場合は、「車いす1台と、つえをついた人がすれ違える広さ」を目安にするとよいでしょう。
なお受付カウンターに関しては、座った状態で受付ができるカウンターにするもしくはカウンターの一部を車いす用にする(カウンターを低くする)とすれば、多くの人に負担なく利用してもらえます。
検査室と診療室を考える
クリニックにおいてもっとも重要な部屋として「診察室」がありますが、同様に重要なのが「検査室」です。
耳鼻科の場合は聴力検査などを行うことが多いため、しっかりとした防音設備を備えた防音室を作ることが求められます。また、エックス線撮影を行ったり、アレルギー性鼻炎の診察を行うために採血をしたりするのであれば、それ用のスペースの確保も必要です。
なお、「診察は医師が行うが、検査はそれ以外の医療スタッフが行う」というクリニックも多いことでしょう。その場合は、診察室と検査室を分けるのもひとつの手です。こうすることでより効率よく検査―診察―治療を進めることができます。
さらにクリニックにおいては、「配線工事」が非常に重要となります。これは耳鼻科でももちろん例外ではありません。
「ここに検査機材を置き、収納をここに作るとしたら、導線はこのようになる」などのように、実際の動きを想定して配線を考えると失敗が起きにくいといえます。
隔離スペースを用意できればなお良い
新型コロナウイルス(COVID-19、以降「コロナ」の表記に統一)が流行しはじめてから、ほかの人の症状に敏感になっている人が多くなりました。これはコロナが第5類感染症扱いになった後でも変わることはありません。他者のせきが気になる人のために、また感染症そのものを防ぐために、隔離スペースが用意できれば理想的です。また、性能の良い空気清浄機を導入することも強く推奨されます。さらに、抗菌・抗ウイルス仕様の壁紙を積極的に採用するようにしましょう。
「隔離スペースを作ることは、クリニックの敷地面積的に非常に厳しい」という場合は、
・間隔を開けて座ってもらえるようにする
・車で待っていてもらう
というようにアナウンスできる体制を整えます。
間隔を開けて座ってもらうためには、医療スタッフからの声かけも効果的ですが、「ソファではなく、1人用の背もたれつきの椅子を複数用意する」などのようなやり方も効果的です。ソファの場合は待っている患者様の数によってはどうしても隣同士の距離が近くなってしまいがちですが、1人用の椅子ならばこのような心配もありません。
「スタッフの目が行き届く内装」に
耳鼻科は一人ひとりにかける診療時間が短い傾向にある科ですが、年代を問わず多くの層が来院する科であることはすでに述べた通りです。来院する患者様の数が非常に多く、「開院している時間はずっと忙しい」というクリニックも多いことでしょう。
そのため、耳鼻科の内装は、「医療スタッフが、加療中の患者様の様子がすぐに分かるつくり」にしておくことが重要です。
たとえば、医療スタッフがほかの作業をしていた場合であっても、点滴や吸入を受けている患者様に目を向ければ、残量が分かったり、治療が終了した患者様の様子が分かったりできるようなつくりにしておくのです。これは患者様の不安を軽減することにも繋がりますし、医療スタッフの効率アップにもつながります。
また、クリニックは全般的にプライバシーの保護が求められますが、耳鼻科の場合は、ほかのよりデリケートな科よりはプライバシー保護の優先順位は高くありません。そのため、「完全個室」などにこだわる必要性は薄く、適宜パーテーションを使うようにすればよいでしょう。
下記の記事では、耳鼻科を含めたクリニック設計のポイントを診療科別にご紹介しているので、ぜひこちらも参考にしてください。
まとめ
耳鼻科には、年齢層を問わず多くの人が来院されます。そのため「だれでも来院しやすいつくり」にする必要があります。またスピーディーに患者様を案内できる内装にしたり、感染症対策を意識したデザインにしたりする必要もあります。診察室と検査室、待合室のバランスについてもよく考えましょう。
私たちフルサポクリニックは、耳鼻咽喉科の内装・設計を手掛けています。ご予算や地域性にあわせた最適なプランをご提案しますので、耳鼻咽喉科クリニックの内装をご検討の際には是非ご相談ください。
この記事の著者
フルサポクリニック編集部
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