クリニックの開業に最適な時期はあるのか?診療科目別にみたベストなタイミング
勤務医を離れ、独立開業するには長い下準備と大変な努力を重ねる必要があり、クリニック開業を目指される先生方は日々奮闘されていると思います。
せっかく待望のクリニックを開業するのであれば、一番ベストなタイミングでスタートさせたいものですね。
一般的には医局との関係などにより、春先と秋口が開業のタイミングとみて、多くの先生がこの時期にスタートされるのではないでしょうか。
しかし、診療科目によっては、それが必ずしもベストの選択とはいかないようです。
需要期を見極める
ある時期になると、その時期に特化した疾患や病気の症状が急激に増加し、患者数が急増することはご存じでしょう。
スギなどの花粉が増える春先には耳鼻科へ行く人が増えます。
炎天下での日焼け症状に苦しむ人や、昆虫採集、夏祭り中に酷い虫刺されにあってしまう子供は梅雨明けから夏にかけて増えていきます。お母さんが慌ててて皮膚科に駆け込むのもこの時期です。
インフルエンザや風邪は秋口から冬に流行り始めますね。内科の待合室は患者で一杯です。裏を返せばこの時期の皮膚科の需要は少ないことが読み取れます。
このように診療科目によっては、季節によってクリニックが必要とされる時期とそうでない時期があるのです。
単純に一般的な開業時期に合わせていては患者数を確保できないばかりでなく、クリニックの成功にも影を落としかねません。
診療科目別にみた開業のベストなタイミングは、
耳鼻科の場合は11月。最も多いとされるスギ花粉のアレルギーは2月中旬頃から出始めますので、前年の11月からそれに備えます。
皮膚科は6月に。あせも、日焼けなどの皮膚疾患は夏場に多くなりますので、その患者数増加に備えて6月が望ましいです。
内科は9月から10月前半に。風邪の症状を訴える人が増えるのが12月にかけてです。またそれ以前にインフルエンザの予防接種を受ける人も増えます。
整形外科は春先。屋外での活動量が増えるこの時期に需要が高まります。
と、このようになり、どの科においても需要最盛期とされる時期より約2ヶ月早くオープンされることをおすすめします。
どんなにベテランの医者や看護師、スタッフであっても、オープン仕立ては全ての事に不慣れで、仲間内同士の阿吽の呼吸などありません。ルーティンも確立されていないでしょう。
そこでこの2ヶ月を使ってスタッフ全体のトレーニングを行い、院内の体制を確立させるのです。
また開業当初は近隣住民にクリニックが知られておらず、地域に根付いていません。この2ヶ月の間に少しずつ口コミ等でその存在を知ってもらうようにするのです。
人々が必要としている時期にタイミングよく開業しているので、目に止まりますし、より意識に残りやすくなります。
こうすることで、最盛期にはクリニックは広く認知され根付いた状態となり、多くの方が一度に来院されたとしても、慣れたスタッフによってスムーズに接遇が行われます。患者様にも不安を与えず好印象となり、よりプラスへと動いていくのです。
また患者を集めることだけへのメリットではなく、院内スタッフのモチベーション向上にもなります。開業当初から来院数が多いと、やはり仕事にもハリが出、責任感も増すなどし良い雰囲気になります。
さらに需要最盛期にきちんと患者数が確保されているということは、資金面への安心にも繋がるのです。
開業すると医療機器購入、人件費、テナント料、光熱費に雑費などそのランニングコストは莫大です。スタートが上手く行かないと、悪循環へと陥る確率も高く、運営に対するストレスから精神不安を抱えてしまうこともあります。
開業当初に不必要な不安を抱く必要はありません。順調なスタートが切れるように最善策を取るべきなのです。
このようにクリニックの開業時期というのは、未来の成功を左右する重要な決定事項であり、決して何かの都合に合わせるものではないのです。可能な限り患者からの需要が高まる時期に設定した方が望ましく、軌道に乗せやすいと言えます。
とは言え、先生方それぞれに、それぞれのご事情があるでしょう。
需要期にこだわりすぎて準備も半ばで開業してしまうのは失敗のもとです。勤務先の病院への礼節も忘れないで頂きたいものです。想像以上に狭いこの業界では、人の繋がりなしに成功はあり得ません。快く応援してもらえるようにするのが大切なポイント。
礼節を持って義を重んじる。飛ぶ鳥跡を濁さずです。
この記事の著者
フルサポクリニック編集部
医療、介護施設の設計施工を得意とする「FULLsupport」が運営。
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