クリニックの内装~内科の内装を考える
「内科」は、数ある科のなかで最もクリニックの数が多い診療科です。そのなかで競合のクリニックに勝っていくためには、クリニックの内装を考えることも重要です。
この記事では、内科に求められる内装と、他の診療科との内装の違いについて解説していきます。
「内科」を名乗る医療機関は全体の6割以上!
病院施設のなかでも、「内科」を名乗るところは非常に多いといえます。厚生労働省が令和2年に出した統計においては、内科を名乗っている医療施設は62パーセントを超えていました。これは重複計上もOKとしている統計ではありますが、それでも、全体の6割以上が「内科」であるということは特筆に値すべきことです。
このような現状があるため、内科として新しくクリニック・医療機関を開設する場合は、ほかの同業他社・既存の医療機関との差別化を行い、より良い施設を作っていかなければなりません。
そしてそのより良い施設を作るための注目ポイントのひとつとして、「内装」があります。
出典:厚生労働省「令和2(2020)年医療施設(静態・動態)調査(確定数)・病院報告の概況」内「医療施設調査」内「診療科目別にみた施設数」p12
内科全体に求められる内装の要素
一口に「内科」といっても、何を専門とするかによって求められる内装の要素は異なります。ここではまず、内科全体に求められる内装の基本について見ていきましょう。
診察室と処置室は近くなるように
内科では、診察後処置に移る、というケースが多いかと思われます。そのため、診察室と処置室は基本的に近くなるように配置します。
診察室と処置室を扉で隔てておいて、廊下に出ることなく、診察室から直接処置室に移れる構造にしてもよいでしょう。
待ち時間が長くなりがちなので、ソファは良いものを
内科は非常に高い需要があるため、患者さんの数も多くなりがちです。また診察や処置に時間がかかることも多いといえます。
そのため、待合室に置くソファは、ある程度の品質があり、長く座っていても負担がかからない座り心地の良いものを選びましょう。
またいろんな状態の人が来ることが予想されるため、ソファだけでなく、キッズスペースや足を伸ばして座れるスペースを確保できればなお良いといえます。
スムーズな導線を確保することが重要
スムーズな導線を確保することも、内科の内装を考えるうえで重要です。
クリニックはさまざまな疾患を抱える患者さんが訪れる場所ですから、バリアフリーを意識して、負担なく移動できるようにします。また、基本的には車いすが通れる十分な広さを確保することが望ましいといえます。
この「スムーズな導線」は、患者さんの視点からだけでなく、スタッフの視点から考えることも重要です。看護師や受付のスタッフが各スペースにアクセスしやすい作りにしましょう。ただし休憩スペースに関しては、患者さんの目が届かない場所に設けるなどの工夫が必要です。
内科クリニックが押さえておくべき内装設計のポイントについて詳しくはこちら
消化器内科、神経内科、呼吸器内科、循環器内科……専門の科による内装の違い
内科全体の内装について紹介したところで、ここからは専門の科ごとによる望ましい内装について考えていきましょう。
【消化器内科】トイレの整備をしっかりと
便秘や下痢などの症状も診ることになる消化器内科では、待ち時間に腹痛に悩まされる人も多いことでしょう。そのため、消化器内科では、トイレの整備をしっかり行います。トイレは臭いがこもりやすく、汚れやすい場所であるため、抗菌効果を意識した壁紙を使いましょう。また、汚れにくい便器なども、意識して採用しましょう。たとえ初期投資が多少高くなっても、患者さんにとってストレスなくトイレを作ることが、消化器内科の内装を考えるうえでは重要です。
トイレはほかの内科に比べて数を多くし、広めにとります。車いすでも入れる十分なスペースのあるトイレを確保し、男女別に分けるようにするとよいでしょう。
【神経内科】広めのスペース+平面構成がキー
まず一番初めに考えるべきことは、「導入する機械の大きさ」です。検査機器のサイズから、求められる部屋の広さを考えましょう。その後に、「どのような内装にするか」をイメージしていきます。
神経系の疾患を抱える人が多く訪れる神経内科では、「落ち着いて過ごせる空間」を作ることが重要です。クリニックの色は落ち着いた白色や茶色などを意識して選び、患者さんがなるべく心穏やかに過ごせる内装にしましょう。防音をしっかり意識すれば、さらにストレスなく過ごせる空間となります。
また、バリアフリー化はほぼ必須で、車いすや杖を使っている人でもスムーズに動けるような作りを意識します。手すりを壁にめぐらし、支えを使って移動できるようにしましょう。なお手すりを配置した場合、特にその部分の壁紙は汚れやすくなりますから、汚れを落としやすい壁紙や抗菌効果のある壁紙を選択すると、衛生管理が楽になります。
【呼吸器内科】感染症対策が必須
呼吸器内科は、コロナが多少落ち着いた現在であっても、感染症対策が強く求められる科だといえます。
待合室で待っている患者さん同士の間で感染が拡大することは避けたいため、待合室は意識して広めに取るようにします。また、ソファではなくイスを間隔をあけて配置することで、自然と患者さん間の距離を広くすることができます。
常勤医師の数にもよりますが、複数の診察室を作るとより感染症の対策がしやすくなるでしょう。また、感染症が疑われる患者さんに対しては専用の待合室・診察室に案内できるような内装にしておくと、さらに安全です。場合によっては、「感染症が疑われる場合は、車の中でお待ちください」などのように分かりやすい案内を入口付近に提示するようにします。
【循環器内科】廊下の幅は広く
心臓や血管に不調を抱えた人が訪れることになる循環器内科の場合、車いすが通れる十分なスペースを確保することが必要です。最低でも車いすが自力で移動できる幅、可能なら旋回が可能な廊下幅を推奨します。
確保できる敷地面積などにもよりますが、車いす同士、あるいは車いすの患者さんと杖の患者さんがすれ違える廊下幅を確保できればもっとも良いでしょう。
なお、廊下の幅の目安は、
・幅90センチ……車いすが通れて、車いすで角を曲がれる
・幅150センチ……車いすと人がすれ違えて、車いすで旋回ができる
・幅180センチ……車いすと車いす、車いすと杖の人がすれ違える
とされています。
さらに、デザインはご高齢の方が多く訪れる科でもあるため落ち着いたデザインにし、掲示物やルームプレートの文字は気持ち大きめにするとよいでしょう。
出典:ビースワーク「車イスを利用する場合に取るべきスペースとは?」
その他様々な診療科別の設計のポイントについてはこちらを参考にしてください
まとめ
「内科」のクリニックは非常に多く、全体の60パーセント以上の医療機関が内科と名乗っています。それだけ需要が高いとみることもできますが、同時に、新しいクリニックが参入しようとした場合、ほかのクリニックとの競合が起こりやすいということでもあります。
そのようななかで勝ち抜いていくためには、内装もしっかり意識する必要があります。まずは内科全体に必要とされる基礎事項を守ったうえで、それぞれの専門の科に求められる要素をクリアした内装を考えましょう。
この記事の著者
フルサポクリニック編集部
医療、介護施設の設計施工を得意とする「FULLsupport」が運営。
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