クリニックでは「明るさ」が重要!2つの方向性から考える「明るさ」について
クリニックはその性質上、「明るい空間であること」が求められます。そしてこの「明るさ」には、「物理的な明るさ」「雰囲気としての明るさ」があります。
ここではクリニックの明るさに焦点をあてて、物理的な明るさの基準と、雰囲気としての明るさの演出方法について解説していきます。
クリニックの「照明」には基準がある
日本には「JIS照度基準」と呼ばれる考え方があります。これは各所における照明の基準を示したものであり、ルクスで表されるものです。
同じ「クリニック」であっても、求められる照度基準は場所によって異なります。たとえば非常に繊細な作業を要求される手術室では20,000ルクスほどの明るさが求められます。ケースによっては、10万ルクスもの明るさが求められることもあります。
一般家庭の食堂の明るさが50~100ルクス程度であること、また手芸などに必要な照明基準が2,000ルクス程度であることを考えれば、この数字がどれくらい明るいかが分かるでしょう。また、診察を行う部屋も、500~1,000ルクス程度の明るさを保つことが望ましいといわれています。
これは、クリニックを始めとする医療機関は、見落としや誤診を防ぐために、十分な明るさを保つ必要があるからです。
反対に、患者さんが過ごすことになる病室の場合は、100ルクス~300ルクス程度が基準とされています。また深夜の場合は5ルクス程度の明かりにすることが求められています。
このように、同じ「クリニックの照明」であっても、部屋によって求められる明るさは異なります。
ただ、照明はルクスだけを意識すればよいという訳ではなく「グレア」と呼ばれる照明の考え方を考慮する必要があります。この「グレア」は、「物が見えにくくなるまぶしさ」のことで同じ照度であっても、グレアによっては反対に見づらくなってしまうため注意が必要です。
そのため、クリニックの照明計画を考えるときには、「この部屋に求められる明るさはどれくらいか」「どんな照明を選べば、理想的な明るさを作ることができるか」に加えて「どんな照明家具を選び配置を考えれば、まぶしくなく、かつ見やすい空間になるのか」を意識する必要があるでしょう。
「明るい雰囲気」のクリニックを作るために
前述したとおり、クリニックにおける「明るさ」は、物理的な照明の話と、雰囲気の話に分けられます。ここからは後者について解説していきましょう。
クリニックはその性質上、「明るい空間」であることが求められます。小さなクリニックであっても、明るさを意識して作られた空間であれば、広々とした印象になります。そしてこうした印象を持つクリニックでは、患者さんは非常に過ごしやすく、リラックスして診察を受けることができます。
明るい雰囲気のクリニックを作るときのポイントは、以下の通りです。
・採光を意識する
・白色などの明るい色を使う
・壁や柱を少なくして、開放感のあるクリニックにする
・清掃しやすいデザイン、汚れがつきにくい壁紙などを利用する
一つずつ解説していきます。
採光を意識する
太陽光が入りやすいクリニックにすると、室内は非常に明るくなります。
元々クリニックの建築においては、「有床クリニックの場合は、採光のために窓を作る義務がある。病室の床面積の最低でも10分の1の大きさの窓で、かつ換気できる窓を設置しなければならない」と決められています。
しかし有床ではないクリニックであっても、窓を設置し、太陽光を取り入れることは非常に重要です。
なお「窓を大きく取りたいが、西日が入ってくるのでクリニックの室温が上がりやすい」などの場合は、断熱フィルムなどを上手く利用することで対策が可能です。
白色などの明るい色を使う
白色に代表される膨張色は、部屋を広く見せる効果があります。また部屋全体を明るく見せることができるため、積極的に採用しましょう。さらに白色は、「清潔」「曇りがない」といった印象を与えるため、クリニックにぴったりの色です。
白色は、穏やかな茶色などとも相性が良いです。
ホワイト×ナチュラルブラウンはクリニックの内装の色として定番の組み合わせで、柔らかさと明るさ、親しみやすさを同時に出すことができます。また、ナチュラルな印象に仕上がるため、特に小児科などでは非常におすすめの配色といえます。
壁や柱を少なくして、開放感のあるクリニックにする
壁や柱があると、明かりや太陽光がそこで遮られてしまいます。そのため、「明るいクリニック」「広々としたクリニック」を作りたいのであれば、壁や柱は少なくするとよいでしょう。また壁や柱を少なくすることで、移動もしやすく、車いすや杖の患者さんでも行き来しやすくなります。さらに、待合室で待っている間に体調を崩してしまった患者さんがいた場合、スタッフが気づきやすくなるというメリットもあります。
ただ壁や柱を極端に少なくしてしまうと、プライバシーの確保が難しくなることもあります。
このため、診察室やカウンセリングルームなどはしっかりと防音処理を行うようにするなどの工夫も必要です。
清掃しやすいデザイン、汚れがつきにくい壁紙などを利用する
医療機関では、「清潔さ」「衛生の徹底」が強く求められます。そのため、クリニックは常にクリーンな空間でなければなりませんし、掃除と手入れが行き届いた空間でなければなりません。薄汚れた壁紙は衛生面に問題がありますし、クリニック全体の雰囲気をよどませてしまいます。
新しくクリニックを開業する場合は、汚れがつきにくく、抗菌効果のある壁紙を選びましょう。特にトイレなどの汚れやすいところは、このような対策が必須です。
また掃除しやすいようにするために、凸凹が少ない設計にします。不要なへこみやでっぱりを排除して、スタッフが掃除しやすい作りにしましょう。
科によっては、「落ち着き」を重視することも
ここまで述べてきたように、クリニックは基本的には「明るく」「広々とした」空間を目指して内装を考えるべきです。
ただしAGAクリニックや美容クリニックなどのように、患者さんの大半が大人である科でかつプライバシー性が強く求められるクリニックの場合は、この限りではありません。
このような科の場合は、「落ち着き」が求められるため、あえて黒や紺などの色を積極的に採用する傾向にあります。また待合室は間接照明を入れてシックな雰囲気にし、患者さん同士の距離感がとれる設計にするケースも多くみられます。
壁や柱もほかの科に比べて多くすることで、「音」「声」が響きにくいように工夫しましょう。
まとめ
クリニックにとって、「明るさ」は非常に重要な要素です。その空間に求められる照明をよく考え、明るいクリニックを作るためには何が必要かを意識するようにしましょう。
この記事の著者
フルサポクリニック編集部
医療、介護施設の設計施工を得意とする「FULLsupport」が運営。
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