「選ばれる歯科医院」になるために~内装設計の重要な8つのポイント

虫歯は自然に治ることはありません。そのため、ほとんどすべての人が歯科医院を利用することになります。その意味では、歯科医院は比較的安定した経営が見込めるクリニックだといえるでしょう。
ただ、多くの人に通ってもらい、リピーターとなる患者様を獲得するためには、「足を運びやすい内装」「リラックスして治療が受けられる内装」にすることも重要です。
ここでは、「選ばれる歯科医院になるための内装」を、8つのポイントから解説していきます。
歯科医院は「大勢の人が来ること」を想定して作るのが基本
クリニックによってメインターゲットは多少異なりますが(後述します)、基本的には歯科医院は「大勢の人が来ること」を想定して内装デザインを考えるのが基本です。「ユニバーサルデザインであること」「閉塞感のない院内を作ること」「音に配慮した内装にすること」を意識すれば、それが可能になります。
・ユニバーサルデザイン
ユニバーサルデザインとは、「年齢や障がい、性別、文化背景に関わらず、どんな人でも利用しやすいデザイン」を意味する言葉です。これは身の回りのもの、たとえばシャンプーボトルや文房具、食器に適用される概念ですが、内装にも適用されます。
たとえば、「段差のない出入り口」がまず筆頭として挙げられます。また、車いすでも通りやすい自動ドアや、杖などを使っていても使いやすいトイレ、手すりを配した廊下、滑りにくい床面なども、ユニバーサルデザインのうちの一つです。
クリニックは一般家庭以上にユニバーサルデザインを意識する必要がありますし、老若男女問わずに訪れる歯科医院ならばその重要性はさらに上がります。
・閉塞感のないデザイン
歯科医院は、「閉塞感のないデザイン」を意識する必要があります。閉塞感のある内装の歯科医院では人はつい緊張してしまいますし、この緊張感はリピーターの足を当座蹴ます。
閉塞感のないデザインにするためには、まずは「光」を意識するとよいでしょう。窓を広く取り、積極的に自然光を取り込めるようにします(ただしプライバシー保護の観点から、外から見える位置に待合室がある場合は、道路に面したガラスをすりガラスにするなどの工夫が必要です)。
また、可能であれば天井を高く設けます。加えて、イスやカウンターの色を柔らかい色にしたり、木目のデザインを選んだりすることで、閉塞感は大幅に緩和されます。
・音への配慮
現在は医療機器も発達しましたが、歯科医院のイメージというと、「隣の席からキュイーンという高い音が響いてくる」「歯を削るガリガリとした音が聞こえる」と話す人も決して少なくはありません。
このような音は、治療を受けている患者様自身はもちろんのこと、隣のブースで治療を待っている患者様や、待合室で待っている患者様にも恐怖感と緊張感を与えます。
そのため、歯科医院のデザインを決める場合は、「音への配慮」も考慮する必要があります。
もっとも理想的なのは、「天井まで届く壁で治療ブースを一つずつ仕切り、完全個室にする。また、待合室との間にも分厚い扉を設ける」というものです。
ただこれが難しい場合でも、「天井近くまであるパーテーションで仕切る」「防音効果のある壁紙を利用する」「待合室と処置室の距離を可能な限り離して、ナースステーションで区切る」「待合室と処置室の間の廊下に、直角に曲がり角をつける」などの工夫をすることで、音は響きにくくなります。
音には直進性があり、かつ二乗減衰するため、音の「見通し」がつかないように、院内に複数の曲がり角を設けることで防音効果が高められるのです。
デザインを決めるための考慮要素・判断材料

上記で挙げた3点は、歯科医院の内装デザインを決めるための基本となるものです。
ただ、歯科医院の内装を考えるうえでは、ほかにも考慮するべき点があります。
それが、「ターゲット層と診療内容」「敷地面積」「開院する場所」「診療形態」「個室にするか、しないか」です。
一つずつみていきましょう。
・ターゲット層や診療内容
歯科医院は、基本的には老若男女、すべての層の患者様と接することになる場所です。また、外国人を診療することもあるでしょう。歯の悩みはすべての世代・すべての性別・すべての国籍の人が持つものだからです。
ただ、診療内容によって、ターゲットが変わってくることはあります。
一般的な歯科医院の場合、通っている患者様のなかでもっとも大きい割合を占めるのは45歳~64歳の層です。
しかし審美歯科の場合、メインターゲットは20代となります。統計によれば、20代で審美歯科に受診したことのある人は30パーセントとなっていますが、50歳以上では16パーセントに留まっています。また、「定期的に審美歯科に通っている」と答えた人の割合を見てみると20代では44パーセントと4割を超えているのに対し、50代以上では24パーセントに留まっています。
つまり、審美歯科と一般的な歯科では、ターゲットとなる層がまったく違うのです。また、審美歯科は美容クリニックなどに近い性質を持っているといえます。
このようなことから、審美歯科ではラグジュアリーな空間づくりや、ホテルライクの空間づくりなども選択肢に入ってきます。対して一般的な歯科の場合は、「清潔感」「親しみやすさ」がもっとも重要になってくるでしょう。
・敷地面積
「敷地面積」も、内装デザインを決めるうえで考慮すべき材料です。
たとえば敷地面積が広く取れる場合は、曲がり角を多くつけられるうえ、物理的に待合室と診察室の間の距離をあけられるため、音は響きにくくなります。対して敷地面積が狭い場合は、曲がり角や壁の配置に限界があるため、同じ程度の防音性を確保しようとするならば壁にさらに吸音ボードを設置するなどの工夫が必要になるでしょう。
また、テナントタイプで天井の高さをあまり出せないクリニックの場合は、窓を広くして開放感を出すほか、クリニック全体の色を白色などの明るい色にして閉塞感を解消する工夫が求められます。審美歯科などで人気の黒を基調としたデザインは、ハイセンスに見えるという利点はありますが、閉塞感を出しやすいカラーだからです。
・どこに開院するか
「どこに開院するか」で内装が変わってくることも念頭に置いておきましょう。
たとえば、オフィス街で開業する場合、足を運ぶ人の多くはビジネスマンとなるでしょう。
対して郊外(特に、学校が多い地域)で開業する場合は、お子さんやご家族連れが多く来院することになります。
前者の場合はキッズスペースや駐車場は必ずしも必要とされませんが、後者の場合はキッズスペースや駐車場がほぼ必須となります。
また内装デザインにおいても、前者はスタイリッシュでモダンなデザインが好まれますが、後者は柔らかさや親しみやすさが重要になってきます。
・診療形態
歯科医院の診療形態は、
・完全予約制
・基本的に予約制
・予約は必要としない(予約なしの患者様も積極的に受け入れる)
の3つがあります。
完全予約制の場合は入ってくる患者様の数をクリニック側がコントロールできるため、それほど広いスペースは必要とされません。対して予約なしの患者様も積極的に受け入れるスタイルの場合は待合室や診察室を広くとる必要がありますし、イスなども多く設置する必要があります。
・診療室は個室にするかどうか
現在は、防音やプライバシーの観点から、診察ブースを完全に個室化している歯科医院も多く見られます。これらの工夫は特に審美歯科などのデリケートな分野を取り扱うクリニックでは、有利に働きます。
ただ診察室を個室にする場合、先生がやや移動しにくくなるというデメリットがあります。また壁で仕切るスタイルをとった場合は、その分広く診察室をとる必要がありますし、施工費用もややかさみます。
「どんな歯科医院にしたいか」を考えて内装デザインを考える
歯科医院は、老若男女問わずお世話になるクリニックです。ただ立地やターゲット層によって内装デザインの方向性が変わってくることはありますし、敷地面積やどこまで防音性を考えるかによって壁の使い方が変わってくることもあります。また、診察形態によって、求められる内装デザインが変わることもあります。
私たちフルサポクリニックでは、先生方それぞれのご希望をしっかりヒアリングして、ベストな内装デザインを提案していきます。
この記事の著者
フルサポクリニック編集部













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