クリニックにパウダールームは必要?科目別の必要性と設計ポイントを解説
患者満足度を高めるために、今注目されているのが「パウダールーム」の設置です。
とくに女性患者が多い診療科や、美容・健診系のクリニックでは、パウダールームの有無が来院の決め手になることもあります。
本記事では、パウダールームの役割や設置メリット、内装のバリエーション、導入時の注意点を、クリニック内装工事の専門家の視点からわかりやすく解説します。
パウダールームは何のためにある? パウダールームを設置するべき科とは
「化粧をする場所」であるパウダールームは、「治療をする施設」であるクリニックとは、結びつきにくいかもしれません。
しかし実は、科によってはパウダールームは非常に大きな意味を持ちます。
たとえば美容クリニックはその代表例です。「施術後に、顔の腫れなどを目立たせないようにするために化粧をしたい」「日焼けは術跡によくないので、日焼け止めを使いたい」「化粧をしてクリニックに足を運んだが、二重の整形手術を受けるにあたり、化粧を落とさなければならない」などのようなときに、パウダールームは役立ちます。
また、「健診」をメインとするクリニックのなかにも、「健診を少しでも前向きにとらえてもらおう」「ホテルのような快適な空間で、健診を受けてもらおう」として、贅沢なパウダールームを作っているところもあります。
さらに、リラックスした空間で過ごせるようにと、パウダールームを設けている精神科のクリニックもあります(通所型・入院型ともにあり)。
女性をメインターゲットとするクリニックによく設けられているパウダールームは、それ自体がひとつのセールスポイントとなることもよくあります。
特に、下記でも取り上げる個室型や、設備が充実したパウダールームは、「どこのクリニックにしようか迷っている」という人にとって、最終決定を促す決断要素の1つとなり得ます。
一口に「パウダールーム」といっても、その設備は大きく異なる
さて、一口に「パウダールーム」といっても、その種類はさまざまです。
一つずつ見ていきましょう。
トイレ+洗面ボウルの最小スペース型パウダールーム
「パウダールーム」は明確には定義づけられていないため、実際には「トイレに洗面ボウルがついているだけの場所であっても、パウダールームと呼称している」というクリニックもあります。
このようなクリニックの場合は、トイレの横に洗面ボウルと、小物を置ける程度のカウンターを設置していることが多いといえます。トイレの拡大版のようなかたちですが、プライバシー性は確保されているため、必要最低限のスペースで構わないということであればこのような内装にしてもよいでしょう。省スペース化ができるため、施工費用が比較的抑えられるうえ、小さなクリニック(特にビル開業)であっても作りやすいというメリットがあります。
ただ、化粧は人によってはかなりの時間がかかるものです。そのため、トイレ+パウダールームが1つしかない場合、「トイレを使いたいのに、中で化粧している人がいて、なかなか空かない」などの問題点が起きがちです。
そのためこのかたちをとるのであれば、2つ以上のトイレを設けることが望ましいでしょう。
イス+1人用のスペースのところも
「1人用のパウダールームしか設置しないが、パウダールームとトイレは分けて、パウダールームにはイスを置き、完全個室型とする」とするクリニックもあります。
この場合、「中で化粧をしている人がいるため、トイレが空かない」という問題がありません。
またパウダールームを使用する人も、イスがあるのでゆっくり落ち着いて化粧をすることができます。個別の独立した空間であるため、着替えもしやすく、使い勝手はよいでしょう。
もっともこのかたちの場合は、「1つにつき、1人しか使えない」ということから、多くの人が同時刻に診察―診療する場合は「パウダールーム使用のための待ち時間」が発生する可能性があります。また個室型の場合はスペースも必要となるため、敷地面積の狭いクリニックでは苦慮することもあります。
壁で仕切るところもある
「カウンターの上に洗面ボウルを複数台横並びで設置し、仕切り壁を設置する」というやり方をとっているクリニックもあります。イスは、設置するところもあれば、設置しないところもあります。
この方法の場合、トイレあるいはパウダールーム使用のための待ち時間がほぼ発生しないのが魅力です。多くの患者様が訪れるクリニックであっても、患者様をお待たせすることなく身だしなみを整えてもらうことができます。仕切りを使う事である程度プライバシー性も確保できるため、比較的使いやすいでしょう。
「完全に個室のパウダールーム」にするのではなく、「仕切りの壁で簡単に仕切る」という方法をとることで施工費用はある程度抑えられます。
しかしほかの2つに比べて広いスペースが必要になるうえ、洗面ボウルも複数台必要になるため、総額がかさむこともあります。
どの形式もメリットとデメリットがるため、自院の広さや患者様の予約状況・混雑状況を考えて、ベストの選択肢を選ぶ必要があるでしょう。
パウダールームの設備に必要なもの
最後に、「パウダールームの設備に必要なもの」を解説していきます。
必須のものは「鏡」「蛇口・洗面ボウル」
パウダールームには、「鏡」「蛇口・洗面ボウル」が必要です。
鏡はできるだけ大きいものとします。また、大小異なるサイズの鏡をつけられるとさらによいでしょう。
洗面ボウルは、比較的大きいものが好ましいといえます。
ファンデーションなどで手指が汚れる可能性もあるので、蛇口は非接触型とするべきです。
タイプによって必要なもの
イスがあるかどうかで、メイクのしやすさは格段に変わります。そのため、スペースが許すならば、イスを設置しましょう。イスの設置がどうしても難しい場合は、立った状態でメイクをすることを想定して、化粧品が置ける小さなカウンターを鏡の下に作るべきです。
パウダールームを更衣室としても使う場合は、着替え対応や衣類の一時掛けに役立つハンガーもかけておきます。
トイレとパウダールームが一体化しているものや、パウダールームが1つしかないところであっても、「今着ている服を脱いでハンガーにかけて、術着に着替えて、ハンガーから服を降ろして持って行ける」という流れを取れるため、非常に便利です。
綿棒やティッシュもあると便利
綿棒やティッシュなどの、メイク直しに使えるものも置いておくとよいでしょう。また、「自院でスキンケアグッズを販売している」という場合は、「お試し」として使えるようにそのスキンケアグッズを配置しておくことで売上アップに繋げられます。
非常にスペースが狭く、水を使うとトイレに水しぶきが飛んでしまうという場合は注意が必要ですが、そうでないのであれば、タオルも設置しておくと便利です。
なおタオル台は初めの内装工事の段階で取り付けておくと、面倒がありません。
「パウダールーム」という存在は「気遣い」の表れ
「治療する場所」であるクリニックでは、「装うための場所」であるパウダールームは、一見すると不必要に思われるものです。
しかし美容外科などではパウダールームは必須のものですし、それ以外の科でも「患者様に寄り添う」という意味でパウダールームは非常に大きな意味を持つものです。言って見れば、パウダールームはクリニックにおける「気遣い」の表れのうちのひとつなのかもしれません。
私たちフルサポクリニックでは、クリニックの設計・内装に特化したプロチームが、パウダールームを含む空間づくりをご提案しています。
「限られたスペースでどう設計すべきか」「どんな機能を入れるべきか」など、開業・改装段階からのご相談も承ります。
この記事の著者
フルサポクリニック編集部
医療、介護施設の設計施工を得意とする「FULLsupport」が運営。
当サイトではクリニックにまつわる設計や内装工事にまつわる記事を随時更新中