クリニックトイレの内装・レイアウトのポイント~「当たり前にある、しかしとても大切な場所」を考える
待合室や診察室と同様に、トイレの設計・デザインには細やかな配慮が求められます。
清潔で使いやすいトイレにすることは、患者様に安心感や快適さを与え、結果的にクリニック全体の評価向上にもつながるでしょう。
今回は「クリニックのトイレ」に注目して、その意味や広さ・レイアウト、設備について解説していきます。
小さいクリニックでもトイレは必須、医療モールではまれに共有することも
言うまでもなく、戸建てのクリニックの場合はトイレは必須です。検尿などの医療行為や体調面の都合でトイレが近い人もいることから、普通の施設以上に、クリニックの場合はトイレが重要になります。
医療モールの場合でも、基本的にはそれぞれのクリニックでトイレを作ることになります。
ただし、まれに個々のクリニックではトイレは作らず、共有のトイレを作るケースも見られます。
クリニックにおけるトイレの広さとレイアウトを考える
クリニックにおけるトイレの重要性を確認したところで、ここからは「クリニックに求められるトイレの広さと、レイアウト」について考えていきましょう。
・車いすが入れるようにする
・おむつかえ台を設置する
・検尿カップの窓口について
・使いやすい便器とは?
の観点からお話していきます
車いすが入れる個室を用意する
クリニックのトイレには、最低でも1つは車いす用のスペースが必要です。
車いすの人がトイレを使うためには、最低でも120センチ×160センチの広さが必要となります。介護スペースも設ける場合は、最低でも160センチ×160センチ、余裕を見るのであれば200センチ×220センチが良いでしょう。
一般的なトイレに比べて、車いすが入れるトイレは広さが求められます。そのため、新築時あるいはリフォーム時には、しっかりと「車いす用のトイレ」を想定してトイレの面積を決めなければなりません。
子どもが多い診療科ならおむつ替え台を設置
小児科、耳鼻咽喉科などの子供が多い診療科ならば、おむつ替え台や子ども用のトイレをひとつ設置しましょう。
加えて、おむつ替え台は、小さくても構わないので必ず1つは入れるようにします。
子ども用のトイレは基本的には独立して作るのが理想的ですが、広さの制限でどうしてもできない場合は、子ども用の補助便座を用意しておき、壁につるすなどの工夫をします。
検尿コップ提出窓口を検討する
クリニックでは検尿を行うことが良くあります。泌尿器科はもちろんそれ以外の科でも行うことがあるので、検尿コップ提出窓口はほぼ必須です。
多くのクリニックでは検尿コップの提出窓口を手洗い場の近くなどに設置していますが、個室から直接検尿カップを出せるようにしておくと、患者様の羞恥心の軽減などに役立ちます。
このためだけにリフォームをする必要性はそれほど高くありませんが、トイレ全体のリフォームや新築クリニックの設立を考えている場合は意識しましょう。
荷物置き場はスペースによってつくりを変える
これはクリニックのトイレに限った話ではありませんが、荷物置き場を作ることも必要です。
小さな棚を設けられれば構いませんが、スペースがない場合は壁掛けフックなどを使います。また、タンクの上に簡単に物を置けるスペースを用意してもよいでしょう。
加えて、杖ホルダ-を壁に取り付けておくのも効果的です。棚の増設や杖ホルダーの設置は後でも行うことができますが、リフォーム・新築時に入れておくと無駄がありません。
バリアフリーに配慮したトイレの設置
クリニックは体に障がいを抱えた人も多く訪れる施設であるため、「使いやすいトイレ」を設置することがなによりも大切です。
かつてはクリニックのトイレも和式のところが多く見られましたが、現在は洋式がほとんどです。和式便座であったところも、洋式便座にリフォームすることが多いといえます。
洋式トイレは座りやすく、力みやすく、また立ち眩みなどのリスクも軽減できます。
また、それ以外にも、
・自動洗浄
・流水音機能
・暖房機能
の機能があれば、なお良いでしょう。
感染症防止、患者様が使いやすいトイレにするために
最後に、「患者様がより使いやすいトイレにするために必要なこと」を、箇所別に考えていきます。
扉
トイレから待合室に続く扉は、自動ドアにするのが理想的です。自動ドアならば車いすの人であっても一人で操作しやすく、「開けたときに、扉の向こうにだれかがいた」という事故も起こりにくくなります。自動ドアにすることが難しい場合でも、引き戸にするようにしましょう。
個室のドアに関しては、そのすべてを自動ドアにすることはなかなか難しいかもしれません。
しかし車いす用のトイレに関しては、やはり自動ドアの導入を検討すべきです。
手洗い場
手洗い場の蛇口は、非接触型の自動のものが望ましいといえます。
ソープも自動で出てくるタイプを選べば、不快感や洗面台の汚れの軽減に役立ちます。
手を乾かすハンドドライヤーに関しては、共有でも構いません。ただ現在は、1つの洗面台で、ソープ/蛇口/ハンドドライヤーでの乾燥ができる多機能のものがありますから、この機会に導入を考えてもよいでしょう。
ペーパータオルは導入コストが少ないうえに、「しっかり拭けている感」があるため一定のニーズがありますが、廃棄にコストがかかるうえ、どうしてもペーパータオル設置個所の周りに水が飛び散りやすく、未使用のペーパータオルも濡れてしまいがちという欠点があります。
照明
照明は、センサー式を導入することで電気代を節約できるでしょう。
ただ人感センサーの場合は、「まだ中に人がいるのに消えてしまった」などの問題があるので、点灯保持時間の調整は必要です。特にクリニックの場合は、トイレに時間がかかる人も多いと考えられるので、比較的長めの時間に設定するようにした方がよいでしょう。
なお、入るときにスイッチで電気をつけるタイプは、新型コロナウイルス(COVID-19)以降、感染症対策の観点からあまり推奨されていません。
換気設備
臭い対策としての意味もありますが、感染症対策の面からも、クリニックでは換気対策はしっかりと行うべきでしょう。
また、「トイレの音」は非常にデリケートなものです。
待合室とトイレの距離が遠すぎても患者様にとって負担になりますが、流水音つきの便座を選ぶなどして、しっかり音対策を行いましょう。
壁紙
一般家庭でもトイレには特殊な壁紙を使用しますが、クリニックの場合は撥水効果はもちろんのこと、抗菌・抗ウイルス効果のある壁紙を選ぶことが重要です。また消臭効果や防カビ効果もある壁紙を選ぶとなおよいでしょう。
またトイレは汚れやすいため、掃除しやすい壁紙を選ぶことが求められます。
緊急ボタン
クリニックのトイレには、緊急呼び出しボタンを必ず設置します。
トイレでのトラブルは、決して少なくはありません。クリニックならばなおのことです。
緊急ボタンは、「押して知らせるタイプ」だけではなく、紐のついているものを選びます。
紐のついているものならば、床に倒れ込んだときでも引っ張ることで通報できるからです。
クリニックのトイレは非常に重要
クリニックのトイレは、ほかの施設とはまた異なった性質や重要さを持ちます。
そのため、広さや便器、設置するものをしっかり考えることがとても大切です。
また手洗い場や壁紙、緊急通報ボタンなどについても事前に計画を練りましょう。
フルサポクリニックでは、トイレスペースの相談・リフォームも受け付けています。
診療科にあわせた最適なプランをご提案しますので、クリニックの内装をご検討の際には是非ご相談ください。
この記事の著者
フルサポクリニック編集部
医療、介護施設の設計施工を得意とする「FULLsupport」が運営。
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