クリニックの窓口「受付カウンター」|基本的な設計と最新式の受付カウンターのポイント
クリニックのなかでももっとも多くの人が訪れるのは、「受付カウンター」です。基本的には患者さんは全員この受付カウンターを経由することになります。
今回は「クリニックの内装デザイン」のなかでも、特にこの「受付カウンター」に注視して、その基本の作り方やデザインの考え方、2024年の最新の受付カウンター事情について解説していきます。
クリニックの受付カウンターの基本
まず初めに、
・受付カウンターの高さ
・受付カウンターの位置
・受付カウンターのデザイン
について解説していきます。
受付カウンターの高さ
受付カウンターは、スムーズに受付業務が行える高さに設定する必要があります。あまりにも低くても業務が滞りがちになりますし、逆に高すぎても不便さを感じることになります。
受付カウンターの高さは、「立って対応するか、座って対応するか」によって求められる高さが異なります。
立って対応する場合は、100センチ~110センチ程度がよいでしょう。
対して座って対応する場合は、75センチ程度が望ましいとされています。
ただし、医療機関であるクリニックの場合は、車いすの人が来院する可能性も高いため、座って対応する場合よりもさらに低い70センチ程度の高さがよいと考えられています。
「スペースの都合もあるので、立って対応したい。ただ車いすの人にも不便を感じてほしくない」ということであれば、基本を110センチの高さとして、受付カウンターのひと区画を70センチの高さにするなどの工夫をするとよいでしょう。
また、車いすでも回転できるような広さを確保しておくことも重要です。
受付カウンターの位置
受付カウンターは、そのクリニックを訪れる人すべてがアクセスする場所だといえます。そのため、「わかりやすく、だれにでも目に入る場所」に設置するのが原則です。基本的には入口のすぐ側、入口から見て真正面に来る位置に受付カウンターを置きます。また、受付カウンターであることがわかりやすいつくりにするとよいでしょう。
ただし、AGAクリニックや泌尿器科などのように、クリニックのなかでも特にプライバシー性が重視される科の場合は、例外的に受付カウンターを奥まった位置に置くこともあります。
この場合は矢印マークなどで受付カウンターの場所を案内するようにするとよいでしょう。
受付のデザインは、クリニック全体のデザインと調和がとれるものを
受付カウンターのデザインは、クリニック全体のデザインと調和がとれるものを選びます。
たとえばウッディ系の柔らかいデザインを採用しているクリニックならば、受付カウンターもまた木目調のものが望ましいでしょう。
「白」をベースとしたクリーンさを押し出しているクリニックの場合は、受付カウンターもホワイト調でまとめるとスッキリします。
また、モダンな雰囲気を目指しているクリニックの場合は、受付カウンターもメタリックなものや黒を基調としたものにすることで調和がとれるようになります。
なお、ご高齢の方や小さなお子さんが多く来るクリニックの場合は、丸みを帯びたカウンターにすると思わぬ事故も防ぎやすくなります。
クリニックの受付カウンターのデザインについては、こちらの記事で紹介しております。
2025年クリニックの受付カウンターのあり方
受付カウンターのあり方は、時代とともに変わってきます。
ここからは、2025年の最新式の受付カウンターのあり方について解説していきます。
チェックインシステムの導入
「クリニックは待ち時間が長いもの」という印象をもっている人は多いものです。この待ち時間の問題はかなり大きく、これを理由とした患者さん離れが起きる可能性もあります。
そのため、現在のクリニックでは、スムーズな受付を可能にするために、チェックインシステムを導入しているところもあります。患者さんの受付管理がしやすく、業務の軽減にもつながるチェックインシステムは、医療機関側にとって非常にメリットが大きいものです。
このチェックインシステムは患者さんにとってもメリットがあり、「あとどれくらい待てば自分が呼ばれるかわかるので、時間がかかりそうなら車で待つ」などの選択も可能になります。
ただ、ご高齢の方が多いクリニックや、業態上の理由で訪れる患者さんの数が少ないクリニックとは、相性が悪いこともあります。この場合は、「チェックインシステムも利用できるが、対人対応も可能」などのように、フレキシブルな受付システムをとるとよいでしょう。
マイナ保険証のための機械も分かりやすく
2024年の12月2日から、従来の健康保険証の新規発行が終了しました。従来型の健康保険証が使えるのは最長でも2025年の12月までであるため、医療機関も患者さんも、マイナ保険証に対応していくことが求められます。
マイナ保険証の機械は、分かりやすいところに設置するのが鉄則です。
基本的には受付カウンターのすぐ側、患者さんの右手側もしくは正面に設置するようにします。
なお2024年の11月に発表された調査では、70パーセント以上の医療機関において、「マイナ保険証の提示時に機械トラブルが起きた」という統計が出ています。
厚生労働省ではこのような場合の対策について案内を出しているので(例:オンライン◇確認できた被保険者番号を入力→レセプト請求、できなかった場合は被保険者資格申立書の記入を案内するなど)受付のスタッフにはこのことも周知させる必要があります。
明るい照明を採用
受付カウンターは、手元での作業をしやすくするために、ある程度明るい照明を採用することが重要です。
200ルクス程度がクリニックの受付カウンターの照度として理想的であるとされています。ちなみにこの「200ルクス」というのは、子ども部屋や団らんを楽しむことを主な目的としたリビング程度の明るさです。
なおクリニックの受付カウンターは、明るさを求めるために直接照明を用いることもありますが、デザインや照度を考えれば間接照明を選ぶことももちろん可能です。
患者様をサポートしやすいつくりに
受付カウンターを作る場合は、受付のスタッフが待合室にすぐに行けるようなレイアウトにすることが重要です。跳ね上げ式のカウンターにするのもよいのですが、受付カウンターの側に扉を配置してすぐに待合室に行けるようにする工夫も有効です。
また、クリニックは体調不良を抱えた人や、体に障がいを抱えた人も多く訪れる場所です。不測の事態が起きたり倒れたりする可能性もあるため、「受付のスタッフが、通常の業務姿勢でも異変にすぐに気づけるつくり」にすることも重要です。
収納についても考えておきたい
最後に、「収納」に関しても見ていきましょう。
現在は、紙のカルテではなく、電子カルテを用いるクリニックも多く見られます。しかしその場合であっても、収納スペースは必要です。紙のカルテでの管理に比べれば必要とされる収納スペースは少なくなりますが、必ず「片付けられる場所」を用意しておきましょう。
また、受付カウンターの内部の「ごちゃつき」が患者さんから見えないようにするための工夫も必要です。
カウンター内部に段差を設けたり、壁やパーテーションを作ったりするとよいでしょう。引き出しを作るのも有効です。これは患者さんのプライバシー保護にも役立ちます。
新しくクリニックを作る場合もしくはリフォームをする場合は、配線も意識しましょう。配線を考えずに施工してしまうと、カウンターの真ん中や、スタッフが動く足元に線が来てしまいかねません。
まとめ
「受付カウンター」は、クリニックの顔ともなるものです。
基本的な設計のポイントを押さえながら、スタッフにとっても患者様にとっても使い勝手の良いカウンターにしていきましょう。
フルサポクリニックでは、貴院にぴったりかつスタッフの方々が動きやすい受付カウンター(およびその周辺)を提案しています。クリニックのリフォームや新規開院の内装をご検討の際には是非ご相談ください。
この記事の著者
フルサポクリニック編集部
医療、介護施設の設計施工を得意とする「FULLsupport」が運営。
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