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クリニックの内装を考える前に知っておきたい消防法とバリアフリー法の話

クリニックの内装

クリニックの内装を考える前に知っておきたい建築基準法と医療法の話」では、クリニックの内装を、建築基準法と医療法の観点からおはなししてきました。

今回の記事では、この「消防法」と「バリアフリー法」から、クリニックの内装のことを考えていきます。

クリニックを建てるときには消防法を意識することも重要

クリニックにおける消防法について知る前に、まずは「そもそも消防法とは何か」について考えていきましょう。

消防法は、戦後間もない1948年に生まれた法律です。この法律は、「火災が起きないように予防し、人の生命や財産を火災から守り、被害を軽減するためのもの」だといえます。火事は一度起きてしまうと、多くの人の財産や生命を害します。そのため、まずは火事が起きないようにするための予防策を講じ、万が一火事が起きてしまったときにはその被害を最小限にできるようにと定められたのが、この消防法です。

クリニックなどの医療機関は、その性質上、自分で避難することが難しかったり、サポートを必要としたりする人が多くいるところです。そのため消防法では、医療機関に対してルールを定めています。なおこの法律は何度かの改定が行われていて、病床数によって課せられる基準が異なります。

消火器の設置

まず、「消化器」について見ていきましょう。

病床数が4以上のクリニックでは、消化器は広さに関わらず設置が義務付けられています。対して病床数が4以下の場合は、「150㎡以上の空間であるならば、消化器が必要」とされています。

自動火災報知設備の設置

自動火災報知設備は、病床数が4以上の場合は面積に関わらず設置が必要な一方で、病床数が4未満のところでは300㎡以上の空間にのみ設置が義務付けられています。

なお、消防機関へ通報する自動火災報知機の設置は、病床数が4以上の場合は条件によらず設置が必要ですが、病床数が4未満の場合は500㎡以上のところで設置が必要とされます。

ちなみに、「自動火災報知機」とは火災が起きたときに煙などを自動で完治して大音量で建物内の人に火災の発生を知らせる装置です。

対して「消防機関へ通報する自動火災報知機」とは、火災が感知されたときに自動的に「消防機関に」連絡が行く装置をいいます。

どちらも自動で火災を感知して周知する役目を持つものですが、消防機関に通報が行くものかどうかで違いがあります。

スプリンクラーの設置

スプリンクラーの設置も、消防法に定めがあります。病床数が4床以上の場合は条件に関わらず設置が義務ですが、病床数4未満の場合は6000㎡以上の面積の場合にのみ設置が義務付けられています。

ただ、ここで紹介したものは、あくまで最低限の基準です。

そのため病床数が4未満のクリニックであり、かつ設置義務以下の面積のクリニックであっても、消化器や自動火災報知設備、消防機関へ通報する火災報知設備、スプリンクラーを多く入れた方が安心ではあります。

クリニックの立地による規定

現在はビルのなかで診療を行うクリニックも多いかと思われますが、この場合はより制限が厳しくなります。

また、5階以上にあるクリニックの場合は、連結送水管(消火活動に必要な設備のうちのひとつで、効率よく高層階に送水するために必要なもの。送水口や放水口、またホウスイ用具を片付けるための箱などで構成されている)の設置などが求められます。さらに高層階の場合は、非常用のコンセントなどの設置が必要になります。

収容人数による規定

収容人数によっては、防火管理者・防災管理者の設置が義務づけられることも覚えておきましょう。なおこの管理者は従業員であってもなることができますが、その従業員が辞めた場合、改めて防火管理者・防災管理者を置かなければなりません。防災・防火管理者の講習は最長でも2日間であるため比較的取得しやすいのですが、それでも、「防火・防災管理者がだれもいない」という状態にはできません。そのため、病院長などの、「そのクリニックを辞めることがない(辞める可能性が極めて少ない)人が、防火・防災管理者の資格を受けることが現実的です。

ちなみに消防法に違反すると、罰金や懲役刑が課せられる可能性があります。最大で3年以下の懲役刑となるため、注意が必要です。

  病床数4以上 病床数4以下
消化器 必ず設置しなければならない 150㎡以上の場合に設置が義務
自動火災報知設備 必ず設置しなければならない 300㎡以上の場合に設置が義務
消防機関へ通報する火災報知設備 必ず設置しなければならない 500㎡以上の場合に設置が義務
スプリンクラー 基本的には延べ面積3000㎡以上の場合に設置が義務 6000㎡以上の場合に設置が義務

※ほか、高層階の場合は設置義務条件が厳しくなる。また、必要な設備が増える。

患者様が過ごしやすい空間を作るために~バリアフリー法

クリニックの様子

次に、「バリアフリー法」について見ていきましょう。

これは2006年という比較的近代に作られた法律で、「高齢者や身体に障がいを抱えた人が、特定の建築物を円滑に利用できるようにすること」を目的として制定されました。ただ現在はその対象が拡充されていて、精神障がいや知的障害を持つ人に対しての配慮も求められるようになりました。また、建物だけではなく、都市公園などもバリアフリー法の対象とされました(ここではクリニックのことのみを取り上げます)。

クリニックは、まさにバリアフリー法の対象となる場所です。

バリアフリー法ではクリニックに対して、

・出入口や診察室の段差をなくすこと。また、なくすことが難しい場合はスロープを設置すること
・背の高いカウンターを採用している場合は、車いす用の背の低いカウンターも作ること
・車いす用のトイレを設置すること
・車いす用の駐車場(幅350メートル以上)を作ること。また基本的に、車いす用の駐車場はクリニックの出入口から一番近いところにすること
・適宜手すりを設けること

などが定められました。

なおバリアフリー法に違反していて、地方自治体からの是正の命令に従わなかった場合は、罰金刑が課せられます。是正命令に従わなかった場合は100万円以下の罰金が課せられることも覚えておきましょう。

もっとも、たとえこのような法律的な縛りがなくても、クリニックはその性質上、バリアフリーを意識して建てなければならない建物ではあります。なぜならクリニックに足を運ぶ人は体調が優れなかったり、けがをしていたり、障がいを抱えたりしていることが非常に多いからです。このような人に寄り添えない内装にしてしまった場合、患者様の獲得を行うことは難しいでしょう。クリニックを適切に運営していくためにも、バリアフリー法の遵守は非常に大切なのです。

まとめ

クリニックを建てるうえで必要になるものとして、「建築基準法」「医療法」「消防法」「バリアフリー法」の4つがあり、ここでは消防法とバリアフリー法を取り上げました。これらを守らなければ(是正命令に従わなければ)、罰金刑などが課せられる可能性があります。またこれらの法律は、そのクリニックに通う患者様の安全を確保するうえでも非常に重要なものです。

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この記事の著者

フルサポクリニック

フルサポクリニック編集部

関西エリアでのクリニック実績多数!
医療、介護施設の設計施工を得意とする「FULLsupport」が運営。
当サイトではクリニックにまつわる設計や内装工事にまつわる記事を随時更新中

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