クリニック処置室の内装ガイド|機能性とプライバシーを両立させる設計とは

クリニックにおいて、「処置室」は非常に重要なものです。
今回は、「クリニックにおける処置室を作るときのポイント」について解説していきます。
なお「処置室」という言葉の解釈は医療機関によって多少異なりますが、本稿では特に記載をしない限りは、「点滴や採血、身長・体重の測定や、治療上必要な検査・計測を行う場所」とします。
処置室を考えるうえでの基本

処置室のあり方を考えるときには、
・診察室とのアクセス
・仕切り方
・水回り
・広さ
・収納
・換気
の6点を意識します。
それぞれ見ていきましょう。
診察室とのアクセスが良い位置に作るのが基本
処置室は、診察の前後に使うことが多いものです。そのため、処置室と診察室はアクセスを良くし、すぐに移動できるようにします。
後の項目でも触れますが、診察室と処置室のアクセスは、
・一度廊下を経由する
・扉で仕切る
・広めの診察室を設けて、診察室から直接行けるようにする
の3通りがあります。ただ、いずれの場合でも、診察室と処置室は近い位置に配置するのが基本です。
カーテンや、スライド式の扉、壁で仕切る
処置室と診察室は、カーテンや、スライド式の扉、あるいは壁で仕切ります。
仕切り型別のメリットデメリットは以下の通りです。
・カーテン…効率的な導線の確保が可能になります。点滴室が別にあったり、お一人おひとりの患者様の処置を完結させてから次の患者様を診るといった診療体制を採用したりしている場合におすすめです。また、小さなクリニックでも選びやすいかたちです。
・スライド式の扉…移動もある程度しやすく、プライバシーもある程度確保できる仕切り方です。汎用性が高い一方、極小クリニックや、プライバシー性が非常に重んじられる診療科などは、カーテンもしくは壁での仕切り方の方が有用になることがあります。
・壁…プライバシー保護の観点から考えて有効な間取りです。この場合、「診察室で患者様Aを診察しながら、その前に診察を受けた患者様Bの点滴をする」などができます。
水回りを確保する
処置室では水をよく使うため、水回りの確保は必須です。手洗い場はもちろん、流し台も用意し、スタッフが常に清潔な状態で処置に当たれるようにしましょう。
処置室を配置するところに配管するのが基本であるため、そのためのスペースもしっかり確保しましょう。加えて、水はねによる電子機器への悪影響を避けるために、小さな仕切りを設けることも考えるべきです。
なお、どうしても処置室に水回りを設けられない場合は、そのごく近くに洗い場などを設置します。
また水回りは非常に汚れやすいので、掃除しやすい床材などを配置することも大切です。
最低限ベッド1台は置けるスペースを確保する
「処置室の広さはどれくらいが望ましいか」は、クリニックによって多少異なります。
ただ、最低でもベッド1台を置けるスペースは確保するべきです。
また、クリニックはその特性上、松葉づえや車いすを使っている人が来ることもよくあります。そのため、これらを使用している人であっても不自由なく行き来できる広さを確保する必要があります。
特に多くの人が来院するクリニックの場合は、感染症対策の面からも、患者様同士が充分に距離を空けて座れるように広めのスペースを設ける必要があります。
収納スペースはほぼ必須
処置室で使うことになるものは、非常に多くあります。点滴台や注射器、測定機器など、必要な道具は多岐にわたります。そのため、収納スペースはほぼ必須だといえるでしょう。
また、処置室で使う道具は「清潔さ」が何よりも大切になるものも多いため、それらと日常の道具類、あるいは処置後の布などを捨てる場所を明確に分ける必要があります。
なおこの「収納スペースのあり方」は、作業効率自体を大きく左右します。そのため施工前に、「前の職場(勤務医時代)に収納の問題で困ったこと」「看護師が不便に感じていた話」などを改めて見直すことも有効です。
換気設備も整える
新型コロナウイルス(COVID-19)を持ち出すまでもなく、クリニックにおいては「換気」が非常に重要です。クリニックは建物全体で換気設備のことを考えなければなりませんが、処置室ももちろんその例に漏れません。
意外と盲点になりがちなのが、「温度管理によって起きるトラブル」です。
エアコンを使って快適な室温を維持することが重要なのは前提として、それによって起きる結露や乾燥による弊害も大きな問題となります。
このため、換気設備は「温度管理」「湿度管理」「空気の入れ替え」の3点から考える必要があります。
また、メンテナンスが面倒な換気設備を採用すると、ついついお手入れがおろそかになりがちです。換気設備の導入時には、簡単にお手入れができるものを選びましょう。
プラスアルファで考えたいこと

上で述べた基本を押さえたうえで、プラスアルファで考えておきたいことについて解説していきます。
将来的に拡張することになった場合でも対応しやすいデザインに
クリニックを建てた際に考えていた運用方法と、実際の運用方法が異なることはままあります。
また、将来的にクリニックを拡張することになる場合もあるでしょう。
そのようなときのために、拡張性・自由度の高い間取りにしておくとより良いでしょう。
たとえば仕切りを後で入れられるようにあらかじめ補強材を入れておくなどの工夫です。あらかじめこのようにしておくと、拡張時にかかる費用・時間も少なくて済みます。
「患者様のリラックス」を考える
治療にかかる処置は医療従事者にとっては日常的なものですが、受ける患者様にとっては必ずしもそうではありません。患者様が緊張していると注射針なども刺さりにくくなり処置が難しくなるため、患者様がリラックスできる空間を作ることは重要です。
現在のクリニックの処置室のなかには、緊張せずに処置を受けられるよう、リクライングチェアなどを設置しているところもあります。また特にお子さんが多く訪れるクリニックの場合は、お子さんが緊張せずに処置を受けられるようにするために、キャラクターを配置した壁紙を利用したり、パステルカラーの処置室にしたりといった工夫が有効です。
患者様の治療傾向によっては別室を設ける
上でも軽く述べましたが、患者様の治療傾向や診療体制によっては、処置室とは別に点滴室を設けることも有用です。
点滴は長く時間がかかることも多いため、処置室で点滴をし始めると、ほかの患者様の案内が難しくなることがあります。しかし別に点滴室を用意しておけば、このような問題もクリアできます。
なお、点滴室にも処置室と同様リクライングチェアを設置するなどの工夫ができればなおよいでしょう。医療機関によっては、それぞれのチェア・ベッドに個別にテレビを設置しているところもあります。
クリニックにとって大事な「処置室」をより良いものにするために
処置室は、医療機関にとって非常に重要な意味を持つものです。清潔さ・プライバシーの確保・リラックスできる空間であることが求められるため、設計段階でしっかり考えて作る必要があります。また、作る際には、将来のことを考えて、拡張性・自由度の高いものを作れればなおよいでしょう。
私たちフルサポクリニックでは、処置室の設計を含めて、クリニック作りの「より良い間取り」のご提案をしています。
クリニックの開業や改修をお考えの際は是非ご相談ください。
この記事の著者
フルサポクリニック編集部












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