眼科クリニックの内装の考え方と、具体的なポイント
クリニックに求められる「より良い内装」は、そのクリニックがメインとする科によって異なります。
今回は眼科クリニックを取り上げて、「患者様の立場からみる理想的な眼科クリニックの内装」と、「診察する側・スタッフ側の立場からみる理想的な眼科クリニックの内装」について解説していきます。
「見えにくさ」を抱える患者様のための配慮を
眼科クリニックには、目の症状を抱えた人がよく訪れることになります。そのため、そのような人でも過ごしやすい内装にすることが何より重要です。
・意識して通路は広くとる
・待合室の照明は程よい明るさに
・自動ドアの設置やセンサーの設置
・案内は大きな文字ではっきりと表示
・点字ブロックや音声案内も合わせて行う
・滑りにくい床材を選択する
それぞれ見ていきましょう。
意識して通路は広くとる
眼科クリニックでは、通路は意識して広くとりましょう。
眼科に限らずクリニックは車いすでも通れる廊下の幅を維持するバリアフリー化が求められますが、特に眼科クリニックの場合は目に障がいを抱える人のことも意識しなければなりません。
片目が見えないだけでも死角が多くなるため、物や人にもぶつかりやすくなります。そのため、廊下の幅を広く取るだけではなく、「角」を減らす工夫も必要です。角がなければそれだけ人との出会いがしらの事故を防ぎやすくなるからです。また、構造上角が発生する場合は、壁を曲面とし、ぶつかったときの被害を最小限に押さえる工夫もしておくとよいでしょう。
待合室の照明は、明るすぎず暗すぎず
「見やすい院内にすることが重要」というと、「明るい待合室が良い」と思ってしまいがちです。
しかし明るすぎる照明は目の負担にもなりますし、まぶしさによって逆に周りや足元を見えにくくしてしまう原因となります。
そのため、待合室は「明るすぎず、暗すぎず」の照明にするようにします。比較的広い眼科クリニックならば、待合室はシーリング式の照明器具を採用して、通路となるところはライン型の照明にするなどの工夫をすると、照明がひとつの「通路案内」の役目を果たしてくれるので、これも効果的です。
また、眼科クリニックは「自然光」とも非常に相性が良いので、自然光を多く取り入れる窓を設けるのもよいでしょう。ただ室内の明るさが日中と夜で大きく違うことを防ぐため「いつでも同じ程度の明るさ」を維持できるような照明家具を配置することも大切です。
自動ドアの設置やセンサーの設置も重要
視力が著しく低い(あるいは失われている)人はもちろん、手術・処置直後の人も、視野が狭くなったり、動きに制限が出たりします。
また、手術・処置後は目に違和感があるため、無意識的に目を触ってしまうことがよくあります。これはウイルスや細菌による感染症の原因ともなるので、眼科クリニックの内装はこれらを意識したつくりにしなければなりません。
自動ドアや人感センサー、フットセンサーを取り入れることで、このようなトラブルを避けることができます。玄関先の扉を自動ドアとすることはもちろん、診察室なども自動ドアを積極的に採用していくとよいでしょう。
案内は「分かりやすく・大きな文字で・はっきりと」
「診察室」「検査室」などの文字は、大きく、目立つ色、はっきりとした字体で書くことが大切です。場合によっては、ドアに大きく文字を印刷するのもよいでしょう。
これはもちろん、目が見えにくい患者様に対する配慮です。またこれは、患者様からの「診察室はどこですか」「トイレは?」「検査室はどのとびらですか?」という問い合わせの頻度を少なくすることによって、スタッフによる案内の手間を軽減できるという、スタッフ側にとってのメリットにもつながります。
点字ブロックや音声案内も合わせて行うとより効果的
視力が低い人・視力に問題を抱えている人が訪れることのある眼科クリニックでは、点字表示や音声案内を導入するのもひとつの方法です。
点字ブロックというと「屋外にあるもの」という印象を持つ人もいるかと思われますが、現在は屋内用の点字ブロックも開発されています。ただし点字ブロックを床に配置する場合は、廊下の幅もある程度広くとらなければなりません。
音声案内の場合は点字ブロックとは異なり、面積に関わらずに採用できるため、積極的に取り入れていくとよいでしょう。
滑りにくい床材を選択する
眼科クリニックでは、滑りにくい床材を選ぶことが必須です。目に障がい・けが・病気を抱えている人は死角も多いうえ、ご高齢の方などは足元が不安定なこともあります。そのため、転倒を防止するためにも、滑りにくい床材を採用しましょう。また、スタッフが直接目を配ることができないトイレは、滑りにくい床材に加えて、緊急呼び出しのためのボタンを設置することも重要です。
クリニックでは段差を作らないことが基本ですが、段差を作らなければならない場合はその部分の色を変えて明確に分かりやすくすることも重要です。
診察する側から見た理想的な内装デザインとは
上では「患者様からみた望ましい眼科クリニックのデザイン」について解説しましたが、ここからは「診察する側(スタッフ側)からみた理想的なデザイン」について解説します。
医療機器の入れ替えを意識したレイアウト
医療機器は当然経年劣化していくものです。メンテナンスをしっかり行うことである程度寿命は長くなりますが、それでも、眼科クリニックで使う医療機器はおおよそ8年程度で寿命を迎えるといわれています。
そのため、眼科クリニックの内装を考える場合は、「医療機器を買い替えるとき」のことを意識する必要があります。現在使っている医療機器にジャストフィットするつくり(壁など)ではなく、今の医療機器よりも大きいものを入れても問題なく使えるようなレイアウトにしましょう。
診察室の照明は「診察のしやすさ」を重んじる
待合室の照明は「明るすぎず、暗すぎず」を旨として考えるべきですが、診察室の照明に関しては「診察しやすさ」を意識します。
患者様から話を聞くときは明るい部屋で聞くことになるかと思われますが、眼科の場合、暗室で行わなければならない検査も多くあります。
もちろんその都度立って診察室の照明スイッチを操作してもよいのですが、効率よく診察を進められるようにするために、手元で光度を調整できる装置の導入も考えるべきです。
親子で通ってもらえるようにするために~バリアフリーとキッズスペース~
クリニックでは「リピーター」「親子で通ってきてくれる患者様」を獲得することが非常に重要です。
親子で通いやすい眼科クリニックにするためには、バリアフリーの導入はもちろん、キッズスペースの配置も必要です。
クリニックの一角を、子ども用のスペースとして楽しめる空間にしましょう。絵本やおもちゃも置くことで、保護者の負担を軽減させたり満足感を高めたりする効果もあります。
リカバリールームの導入は、患者様にとっても病院にとっても有用
手術後に休めるリカバリールームを作ることは、患者様にも病院にとっても有用です。
眼科クリニックの場合、「目」に関する日帰り手術を行うケースが多い傾向にありますが、しっかり休んでから帰れるリカバリールームの存在は患者様にとって非常にありがたいものです。
またスタッフ側からみても、「急変に備えられる」「異常を訴えられた際にすぐに対応できる」というメリットがあるリカバリールームは、とても意義深いものです。
患者様とスタッフ、それぞれに寄り添う眼科クリニックの内装を
「目」にアプローチする眼科クリニックの開業・改装にあたっては、患者様の目と心に寄り添う内装を考えることが重要です。また、スタッフが動きやすい内装にすることも大切です。
私たちフルサポクリニックでは、眼科クリニックさまの内装デザインを手掛けています。
プランニングから施工、開業までをサポートし、配慮の行き届いた内装施工をスピーディーに実施いたします。
この記事の著者
フルサポクリニック編集部
医療、介護施設の設計施工を得意とする「FULLsupport」が運営。
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